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救急車をタクシー代わりに呼ばないで


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救急車 タクシー代わりに呼ばないで:札幌市消防局 急患対応遅れ心配 毎日新聞(2007.10.2)

救急車は無料のタクシーではありません−−。「ちょっと具合が悪い」との119番通報で救急車が駆け付けたらただの酔っぱらいだった、といった安易な救急車の利用が札幌市で増えている。全体の救急搬送件数が増加傾向にある中で、市消防局は「救急車が本当に必要な急患への対応が心配される」と節度ある利用を呼びかけている。

救急車をタクシー代わりに呼ぶ人が増えているそうです。実際、消防の方と話をすると、「タクシーだと高いから呼んだ」「入院したいから呼んだが、洗面セットがないからコンビニに寄ってくれ」「だって、病院で待たなくて済むから」といった方が少なくないそうです。


と、安易な理由で呼ぶ人が増えている影響なのか、救急車の出動件数が最近、激増しています。


○札幌市消防局

89年 06年
年間3万6000件 年間7万6000件

と17年で2.1倍


○神戸市消防局

94年 04年
年間4万6000件 年間6万6000件

と10年で1.5倍


神戸市消防局では、要請を受け手から救急隊が現場に到着するまでに要する時間も公表していますが、

94年 04年
平均4分24秒 平均5分42秒

と、1分以上の遅延が見られます。神戸市消防局では現場到着に要する時間が長くなったことについて

この救急件数が増加したこともあり、直近の消防署の救急車が出動中に、119番で救急要請があった場合、隣接の消防署から救急車がかけつけることが多くなり、現場到着に要する時間も増加しています。【神戸市消防局】

と、しています。


ところで、平均4分24秒→平均5分42秒の変化について
「なんだ、たった1分遅くなっただけじゃん」と、思う方もいらっしゃるかもしれませんが
この1分が、救急の現場では非常に重要な時間となってきます。


下の図は、ドリンカー曲線というグラフなのですが
呼吸が停止してから心肺蘇生処置にかかるまでの時間と、蘇生率を表した図です。


(http://www.city.shinjuku.tokyo.jp/bousai/survival/survival5.htmlより)


呼吸停止後2分以内であれば蘇生の可能性は90%ありますが
それ以降は、4分では50%、5分では25%と蘇生の可能性が急激に下がっていきます。


「たかが1分」かもしれませんが、蘇生の可能性は4分と5分では倍の差があります。


その遅くなった理由として、「救急車による搬送の必要性がないのに呼ぶ人が増えた」ことが無視できなくなっているため、諸外国で一般的である救急車有料化も議論されているのですが


増える救急車出動/有料化は必要か 四国新聞

総務省消防庁は、増える救急車出動の対策として有料化や民間活用をテーマに専門家による検討会を五月に発足させた。緊急度の低い不適切な利用のために、本当に必要としている人が「後回し」になる懸念が現実味を帯びているからだ。

とありまずが、やはり「有料化をすることで、本当に必要としている人が『料金が払えない』からと、躊躇して手遅れになっては意味がない」という意見が強く、まだ検討の段階となっています。



となると、「不適切な利用を減らす」しかないため、(人員倍増というわけにはいきませんし・・)各消防署では救急車の適切な利用を訴えるキャンペーンを行っています。


◇神戸市消防局 http://www.city.kobe.lg.jp/safety/fire/firehouse/higashinada/qqcall.html
○ポスター掲示



北九州市 救急車じゃないとダメですか? マナーを守って119番
○ポスター掲示


○テレビCM




東京消防庁 救急車の適正利用にご協力を 本当に必要な時に利用できるでしょうか?
○ポスター




救急の制度が今後も安心して利用できるためには、市民の適切な判断が必要となってきますね。

神戸市消防局では

■ 市民の皆さんのご協力が必要
いつ、自分自身や愛する家族・友人の身に、不慮の事態が発生するか分かりません。
事故や急病で、症状からみて緊急に病院に搬送しなければならない場合は、迷わずすぐに119番通報して下さい。
ただし、救急車は、タクシーではありません。助けられる命を助けるため、救急車は、真に必要とする人のために。
119番通報する前に、自家用車やタクシーが利用できないか、今一度検討してみて下さい。


総務省消防庁では

○症状は軽微だが、「交通手段がない」、「どこの病院に行けばよいか不明」といった場合は、民間の患者等搬送事業者*や病院情報提供サービス*等を活用してください。
○定期的な通院等において、タクシー代わりに救急車を常用することは控えてください。
○救急車以外に搬送の手段がなく、緊急に医療機関等に搬送しなければならない場合は、迷わずすぐに救急車を要請してください。

と、本当に必要な人のために、「本当に必要かどうか考えてください」、「本当に必要な時は迷わず要請してください」と適正利用を訴えています。


また、東京消防庁では

救急車を呼ぼうか迷った時、診察可能な病院がわからない場合は、東京消防庁救急相談センターを御利用下さい。
救急相談センターでは、救急車を呼んだ方が良いのか、などの受診に関するアドバイスや応急手当に関するアドバイス、診療可能な医療機関を案内しています。

と、迷うことを前提とした、情報提供サービスを行っています。
これは、小児救急電話相談事業#8800のように、全国に広がるといいですね。



◇参考リンク
救急車の適正な利用について 総務省消防庁
新宿サバイバルマップ 新宿区危機管理課
増える救急車出動/有料化は必要か 四国新聞
神戸市救急需要対策キャンペーン 神戸市消防局
北九州市消防局