最近、毎日新聞に取って代わって、医療崩壊をリードする産経新聞ですが、論説副委員長様がトンデモコラムを書いております。(医療崩壊については、マスコミ様はウヨサヨ関係なくミスリードで一貫しております。なぜって?そりゃ、今の大企業優遇・社会保障カット政策の恩恵を受けられているからさ)
うそばっかりなので、一つ一つつっこんでみる。
◇【経世一言】診療報酬 納税者もモノ申す iza!(2007.11.28)
来年度が改定時期の診療報酬をめぐり日本医師会と財務省がバトルを展開している。引き下げを目指す財務省に対し、医師会の主張は5.7%という大幅な引き上げだ。
その理屈は「地域医療を支える」「国民の安心を守る」「医療の質を確保する」の3つ。まあ、立派な理屈ではある。だが、これを金額換算すると、税、保険料などで何と約2兆円の国民負担増になるから、放ってはおけない。
確かに医師会が言うように、一部地方や産婦人科などで深刻な医師不足が存在する。医師会の主張はその原因を先進国に比べて医療費が少ないとか、近年の2回の診療報酬引き下げに求めている。
果たしてそうだろうか。例えば、保険料や税で負担している公的医療費は、GDP(国内総生産)比で経済協力開発機構(OECD)の平均を上回っている。医師数も毎年、3500〜4000人も増えている。
GDP(国内総生産)比で経済協力開発機構(OECD)の平均を上回っている
社会実情データ図録さんの「図録▽OECD諸国の医療費対GDP比率」では
です。まあ「平均」という、マスコミが好きそうなトリックを持ち出してはいますが(最近のニュースで「クリスマスプレゼントの平均額は5万円」とありましたが、「平均値」はくせ者。9人が1万円、1名が51万円でも平均額は5万円です。平均は外れ値に影響されやすいので要注意)世界第3位の経済大国にも関わらず、順位は医療費も医療費公的支出も、OECD諸国の後半組です。
医師数も毎年、3500〜4000人も増えている
それ以上に、救急搬送件数が増えてます。
◇救急自動車による搬送人員の推移
診療報酬だって安くない。公務員に適用される人事院勧告や物価と比較して、まだ下げ幅に大きな乖離(かいり)がある。つまり、下げ足りないのだ。医師会は公務員との比較を筋違いとするが、税金が投入されている以上、その論法こそ筋違いだろう。
薬価もそうなのだが、税金が投入されているという事実認識が医師には希薄なのではないか。いや、納税者はこの事実をほとんど知らない。
診療報酬だって安くない
激安です。海外旅行保険のAIU保険会社さんの公式サイトにある
○海外での盲腸手術の総費用
に、「盲腸の手術でどれだけの医療費がかかるのか」が掲載されていますが
ニューヨーク | 224万円 |
ロンドン | 114万円 |
台北 | 64万円 |
ジュネーブ | 52万円 |
ソウル | 51万円 |
北京・パリ | 48万円 |
上海 | 23万円 |
と並んでいます。(入院費込みの総額)
で、日本の場合、盲腸の手術自体は21万円。これに入院費などかかってくるので病院の収入=医療費総額=患者が使った医療費は総額では38万円となっています。実際には患者負担は3割ですので12万円ですが、高額療養費などが適用されると、もっと安くなります。
中国・韓国・台湾以下もしくはそれ並の診療報酬のどこが安くないんでしょうか・・・
医療費の財源は保険料が半分と最大だが、国、地方を合わせた税負担が36%も占めている。残りが患者の自己負担である。では、その使い道はどうかというと、半分は医師などの人件費、つまり診療報酬なのだ。公務員ほどではないが、医師も公費で養っている。
不思議なのは医師数、診療報酬とも十分なのに、なぜ地方や産婦人科、小児科の医師不足、そして勤務医の激務が問題になるのかだ。財政制度等審議会の建議が、これにひとつの解を示している。医局制度の問題や開業医を厚遇する診療報酬体系である。
建議は言う。診療報酬が引き下げられても開業医の利益は増えており、年収は勤務医の1.8倍だ。なのに従業時間は少なく、ほとんどが休日・時間外診療をしておらず、週休2.5日制である。
かつては深夜まで往診してくれ、それが医師への尊敬の念となっていたが、いまや往診はないに等しい。それでいて、再診料など診療報酬点数は病院より高い。こうした優遇を既得権益と言わずして何と言おう。
年収は勤務医の1.8倍だ
- 勤務医=サラリーマン
- 開業医=個人事業主
社長と従業員の給与を比較すること自体がおかしいですよ>論説副委員長様。それに、その数値は、医院の収入であって、そこから薬剤や材料費、スタッフの給与などが引かれますし・・・
休日・時間外診療をしておらず、週休2.5日制
保健師をやっているので、論説副院長様よりはわかっているつもりですが
とりあえず、銀行の窓口業務は15時に終わりますが、それで終わりじゃないですよね?突合とかいろいろやって実際は20時〜午前様です。
開業医の先生方も、診療が終わったあとも、診療に付随する業務(カルテ整理云々)をやっていますし、そもそも、開業医=個人事業主=経営者ですので、経営的なこと、つまり社長業務も行っています。診療時間が終われば、業務終了って無知丸出しですよ。
さらに、診療時間外でも行政が委託をした予防接種や住民健診、市民講座など様々な仕事を行っており、診療時間だけ見て「週休2.5日制で就業時間が少なくていいわね」なんて裏付け取材もしていないこと丸出しで、恥さらしてます。
再診料など診療報酬点数は病院より高い
診療所の再診料が病院よりも高いのは、急性期を担当する病院に「外来通院」で済む患者が集中し本来の急性期業務に支障をきたしているのを、診療所に誘導するための厚労省の施策です。
これでは都市部の開業医になる医師が増えるはずだ。若い女性が選ぶ結婚相手の人気職業で、IT(情報技術)成り金と肩を並べるのもうなずける。だが、納税者はこんないびつな状態を放置して、さらに2兆円も負担するほどお人よしではあるまい。
開業医の診療報酬を大幅に減らし、不足する分野に重点配分すれば、指摘されている問題の多くは解決に向かうのではないか。それは税や保険料の負担軽減にもつながる。
なのに、その配分を決める中央社会保険医療協議会(中医協)は何をしているのか。今回の改定の議論でも医師会代表だけでなく、産業界や中立の委員まで引き下げを求める声がほとんどないという。開業医減点の議論もさっぱりだ。
つまり、議論は医療村の中だけで進み、肝心の納税者が蚊帳の外に置かれている。ここは納税者が声をあげるときだ。でないと、増税は際限がなくなる。(論説副委員長)
肝心の納税者が蚊帳の外に置かれている
<消費税ありきの国>
「財政再建」や「社会保障」というと、小泉「構造改革」の歳出歳入一体改革で示された「消費税を含む税体系の抜本的改革を実現する」とあるように、真っ先に挙げられるのが消費税だ。しかし、「福祉(社会保障)のため」という名目で89年度に導入された消費税で社会保障は充実しただろうか。先に記述した国民負担の強化や相次ぐ診療報酬マイナス改定による医療経営の圧迫など、現実は?逆?の事態になっている。
これを裏付けるかのように、89年度から07年度までの消費税の累計は約188兆円なのに対し、法人3税(法人税・法人住民税・法人事業税)による税の減収分は約159兆円に。消費税収は社会保障どころか、大半が法人税の減収分を補填している形になっている。
大企業優遇税制を維持するために、社会保障が犠牲となっており、また、論説副委員長様より上の産経新聞論説委員長様が委員なっている財政構造改革部会は、社会保障費を削って、企業に回せと主張しており、こっちのほうが庶民に負担を強いることを提言していますが・・納税者である庶民を蚊帳の外に追いやっているのは、どなたなんでしょうか?
2兆円増を主張する中医協より159兆円の企業減税を主張する産経新聞論説委員長様も参加している財政構造改革部会の方が、追いやっている側だと思うのですが・・・
まあ、産経の副論説委員長って無知で馬鹿なんですよ。副論説委員長でこんなレベルですから、一般記者なんてもっと酷いんでしょうな。そりゃ、全国紙名乗っているくせに発行部数が地方紙の中日新聞とか西日本新聞以下になりますがなw
*1:と言う声もあるが、それなら窓ふき専用グッズを買います