とりあえず、「連合って何?」と言う方もいるかも知れないので、解説。というか連合の公式サイトからの引用
「連合」(日本労働組合総連合会)は、1989年に結成された日本の労働組合のナショナル・センター(中央労働団体)です。加盟組合員は約680万人。すべての働く人たちのために、雇用と暮らしを守る取り組みを進めています。
労働組合の親分ってことです。すべての働く人たちのために、雇用と暮らしを守るとあるので、「医療制度改革により、現場の疲労はピークに達し、体制の不備による事故も多い。連合なら、もちろん医療の現場で働く人たちのことも考えているのだろう」と思ってサイトを見てみると
◇ここが変だよ、日本の医療 連合が考える医療制度改革の具体像 連合(日本労働組合総連合会)
「ここが変だよ、日本の医療」
医療費を考える、領収書をくれるお医者さんリスト、医療費の不正請求を一掃しようなど。
どうも、「医療費の不正請求」についての関心だけが異常に高いようです。
さて、気を取り直して、進めていくと
ここが変だよ、日本の医療
○「駿河家」のみんなと一緒に、医療費について考えてみよう!
○医療費の「不正請求」を一掃しよう
○お医者さんにかかったら領収書をもらおう
○医療・医療保険制度の改革に向けて
○連合が考える医療制度改革の具体像
と並んだコンテンツの中に「連合が考える医療制度改革の具体像」があるので、詳しく中を見てみると
○連合が考える医療制度改革の具体像-2025年の姿
・医療への信頼回復と患者本位の医療体制が確立されている
・予防・健康づくりを重視した保健医療サービスが確立されている
・質の高い医療サービスを提供できる体制が整備されている
・公正で納得できる医療保険制度となっている
・安心できる高齢者医療制度が実現されている
と、まあいろいろ並んでいますが
気になるのが次の7つの意見。
1.診療所や中小病院は家庭医として初期医療を、大学病院・国公立病院は高次医療をと、医療機関の機能分担と連携がはかられている。
2.ベッド数は適正化され、医師・看護師など医療従事者は、患者の立場で親切・丁寧な治療を行ってくれる。差額ベッド代は安く良好な入院環境にある。入院期間は現在より大幅に短縮されている。
3.診療報酬体系は、出来高払いではなく、「包括・定額払い」になり、医療費の不正請求などは大幅に減った。
4.保険者は統合され、権限は格段に強化されている。医療機関との費用交渉・契約、不正請求や医療事故を起こした医療機関への立入調査も行える。また、医療情報の提供や、健康づくりによって医療費は大幅に減少している。
5.保険医には定年制が導入されている。
6.保険料は現役も含めた平均保険料を納めるが、事業主負担に相当する分は、各保険者が負担する。窓口負担は現役と同じ2割で、70歳以上は1割になっている。
厚労省や経団連、経済財政諮問会議等で言われているのと、ほとんど同じで、いろいろ問題があると思うんですが・・・特に2.3.5.6.の医療崩壊を加速しかねない意見を、労働者側が主張していいのかな・・・
2.について
ベッド数削減すると社会的入院は自宅へ戻ることになります。
そもそも社会的入院は、「家で看ることができないから退院してもらっては困る」という主に家族側の都合(夫婦共働きのため、自宅で看るとなると、仕事を辞めないといけない等)により、退院させることができずにいるという現状が多いのですが、ベッド数削減すると、まずこの社会的入院が退院対象となります。
病院経営という視点で考えると、長期の社会的入院は診療報酬が減らされる、それが減るので医療側は構わないのですが、病人を抱える家族にとっては、大問題のような気がしますけど・・・
入院日数短縮化も患者側にとって負担になります。入院日数を短縮化すると、急性期をすぎて安定しリハビリを導入する頃には「退院です。今後は通院でリハビリを行ってください」となるんですが・・・アメリカのように「病院の前に退院患者向けホテル」ができそうですね。
3.について
包括・定額払い、いわゆるDPC(診断群分類別包括評価)ですが、システムとしては
と決められていて、実際にかかった費用を引いた残りが病院の収入となるシステムです。
メリット | 「医療費削減が期待できる」「過剰診療の抑制」など |
デメリット | 「検査や治療をやればやるほど病院の収入が減る」 |
今まで「問題ないかも知れないが、気になるのでやっておこう」と念のために行っていた検査ができなくなることや、医師の自由裁量権がコストに影響される、また同じ病名だから同じ治療・看護で済むわけはなく、クリティカルパスから外れたケースへの治療をどのようにやればいいいのかといった懸念もあります。
さらに、問題なのが医療訴訟でして、「○○という検査を行っていれば助かったかもしれないので病院側の有罪」というトンデモ判決が量産されるなかで
国や厚労省からは「クリティカルパスに沿った治療」を強いられ、一方で、裁判所からは「○○という(標準的な治療では行わないor想像できない、クリティカルパスから外れた)検査を行っていれば、救命できたかもしれない」とされると、現場の限界を超え、一気に医療崩壊しかねない可能性もあります。
5.について
保険医に定年制導入・・・65歳以上の医師で持っているような地域は無医村になるんでしょうか。
6.について
保険料の事業主負担分は保険者が持つ・・・おまえら経団連か?
と言った、ところです。いや〜医療現場労働者の待遇改善については、ほとんど触れてませんね
雇用が不安定(1年ごとの契約にし、3月31日は雇用されていない条件で勤務=勤務年数1年未満のため退職金も雀の涙とか普通にあるらしい)で36時間連続勤務も当然の過労死水準で訴訟リスクだらけの医師
産休もギリギリまで取れず・肉体労働でとても定年まで働ける環境ではない、1年目離職率10%弱の看護師
フルタイムでヘルパーをしても月収十万円以下もあり、ワーキングプアと言われる介護職
こんな環境にいる労働者の改善を求めるのが「労働組合」だと思うんですけど、厚労省や経団連と同じような主張をしているんですね
自治労も官公労、KKRも反戦運動や「国家公務員が賃上げしたから地方自治体も賃上げだ!」をやる前に、医療職についても、考えて欲しいものです。