保健師のまとめブログ

保健師が気になった情報をまとめています。

NHKのディレクターさんとお話しする機会がありました


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ブログを見てくださったNHK報道番組センターの社会番組ディレクターさんから「後期高齢者医療制度の問題点についての意見を伺いたい」という旨のメールがありました。


ディレクターさんから許可を得ましたので、その内容についてご報告いたします。(NHKのニュース番組での「たらい回し表記」について、逆に質問もしてみました)

経緯

とりあえず、なぜNHKの社会番組ディレクターさんと、お話をする機会があったのかというと
ディレクターさんより

後期高齢者医療制度は発想からして問題点の多い内容にもかかわらず、マスコミの力不足で国民が知らない間にここまで来てしまった。このことについて、悔しく思っており、今からでも警鐘をならす手段はないかと取材を行っている。研究者や医師のお話も伺っているが、『こんな混乱が起こるのではないか』と不安に思っている点等について、当事者である高齢者に現場で接している保健師さんの実感も聞きたい」

という内容のメッセージが入っていたため、メールでのやり取り後、電話でお話することになりました。

電話での内容

後期高齢者医療制度の施行への不安点などについて」という内容でしたので、「制度の問題点」と「背景には国民の医療に対する無関心があるからかもしれない」という内容で個人としての意見をまとめ、ディレクターさんに伝えています。


最後に、NHKニュース番組での「たらい回し表記多発」について、逆に質問してみましたパンダ


電話内容は(1)制度の問題点について、(2)国民の医療への無関心について、(3)「たらい回し」表記について、の3つということですね。詳しい内容は下記の通りです。

(1)制度の問題点について

問題点をさらに3つにまとめてみました。

○現行制度よりも保険料(税)の負担が増える
内容 ・保険料の負担額自体が増える。
・(社保等の)被扶養者は、これまで保険料が発生していなかったが4月からは発生する。
・年金が月額15000円以上の場合は年金から天引きになる。
実感 ・負担が確実に増える。
・国は「世代間の不公平の是正」と言っているが、広報周知も報道も十分とは言えず国民のコンセンサスが得られているとは思えない。
介護保険障害者自立支援法でもそうだったが、負担により生活保護に移行してしまうことを防ぐために、保険料を軽減する措置がとられているが、現場で見ていると、「生活保護の受給者よりも、その前の段階の低所得者の方が余裕がない」場合がある。生活保護への移行防止措置は逆に、「生活保護にならないギリギリの程度までは取る」という面もあり、例えば国民基礎年金だけの世帯の場合は、今まで以上に生活が厳しくなることが考えられる。
○診療報酬の別体系化について
内容 ・「後期高齢者医療の在り方に関する基本的考え方(PDF)」において、「後期高齢者にふさわしい医療を提供する」とあるが、「アクセス制限」と「DPC(包括的診療報酬制度)」の導入への布石ではないか。
・「死への準備期間」「安らかな終末期を迎える医療」「終末期は在宅で」いった文言がある。
実感 ・アクセス制限もDPCも医療費抑制効果というメリットはあるが、これについてもコンセンサスが得られているとは思えない。
・今回は、「地域主治医を選ぶことができる」として、強勢はしていが、国は「アクセス制限とDPC導入」をあきらめてはいない。
・「アクセス制限とDPC導入」は、医療費抑制というメリットもあるが、これについても国民のコンセンサスが得られているとは思えず、4月になると、窓口でパニックになることがほぼ確実。
・「安らかな終末期」といった点についても、体制が整備されるのならメリットもあるが、逆に「75歳以上の場合は積極的な医療は行えない」と捉えることもできる。この点についても、コンセンサスが得られているとは到底思えない。
○これらについて周知および報道が不十分
内容&実感 ・「世代間の不公平の是正」と「ふさわしい医療」について国民が十分わかっていないため、4月以降は、パニックになる。そして、「是正」による負担増については役所の窓口に、「ふさわしい医療」によるアクセス制限医療制限(の簡易版)では病院の窓口に苦情が殺到する。
・「道路交通法の改正の場合、周知すべきなのは警察庁と国」と同じく、後期高齢者医療制度についても国が責任を持って周知すべきなのに、現時点では不十分であり、「矛先が車の販売店に向かう」ようなもの。矛先が役所と医療機関という現場に向かうと現場も苦しい。周知をしてないとは言わないが、不十分であり、徹底して欲しい。


これらについて、ディレクターさんも理解しており、問題点やその影響についての認識に大きな違いはないような印象を受けました。後期高齢者医療制度の問題点については、「クローズアップ現代」で取り上げる予定だそうです。(放送予定日まではまだ確定していないとのことでした)


と、後期高齢者医療制度の問題点とその影響についてお話したのですが、「この制度が導入された背景には、国民の医療への無関心さがあるのではないか」という点についても触れました。

(2)国民の医療への無関心について

他の医療系ブロガーさんも言っていることですが


○日本の医療は予算も人も少ないが、世界的な評価は高い
・国の予算(一般会計+特別会計)やGNP比でみると、税金負担が社会保障費よりも公共事業費(行政投資額)が多いのは、G7では日本だけ。
・実際、診療報酬を盲腸での入院費で比較すると・・・日本は欧米と比較して安く、中国・韓国・台湾並
・医師数や看護師数の比はアメリカの半分程度。


○国民の認識は「低い質に高い医療費」
・にも関わらずWHOの医療水準や英国の大学が出した「救急体制」の国際ランキングで日本が上位に来ていたり、新生児死亡率が世界トップクラスで低く、国際的には評価されている。
・これは現場が限界ギリギリの線で頑張っているからという面が大きい。
・しかし、国民は、政府やマスコミからの情報により「医療の質は低い」「医療費は高い」と考えており、限界ギリギリの現場に「質はあげろ、医療費は減らせ」とさらに要求しているので、医療が崩壊している。


○「医療崩壊」を防ぐために
・政府やマスコミには、医療の正しい現状についてを広めて欲しい
・国民は、正しい現状を知った上で
 1.やはりまだまだ国土の整備や治水対策、インフラ整備、ハコモノが必要
 2.インフラはある程度整ったから、今は社会保障を優先すべき
のどちらかを選ぶ時期に来ている。
国の予算に上限はあり収入は減っているのだから、公共事業を維持すれば教育や社会保障など他の分野が削られるのは当然だと思う。それでも公共事業を維持するのなら、医療崩壊は避けられないということを国民は理解して選択するべきだ。



という内容を説明してみました。この点についても、お話したディレクターさんは、国際比較で社会保障費が少ないという現状を知っており、「国民が質が悪い、医療費は高い」と認識していることについては、マスコミがもっと説明していく必要があるとのことでした。

(3)「たらい回し」表記について

お話が終わった後に、逆にこちらから上記の件について質問してみたのですが、ディレクターさんもすでに「NHKが「たらい回し」に固執。お昼もニュース7でも - 保健師のまとめブログ2」を、読んでくれていましたふたば


受け入れ出来るのに、受け入れしなければ「たらい回し」でもいいが、実際は、処置中であり、他の患者さんの処置をすると、それまで処置していた患者さんが亡くなる恐れがある。また、「ベッドの空きがない」も、単純にベッドがないという意味ではなく、「医師がいても他のスタッフがいない」「人工呼吸器などの必要な機材がない」など「受け入れ不可能」状態であり、それを「たらい回し」と表記されると、非常にきつい、凹む、ダメ。
「受け入れ不可能」という実情にあった表現にして欲しい


と伝えたのですが、ディレクターさん自身も「そう思う。たらい回しは不適切。受け入れ不可能だと思う」と話してくれました。
ディレクターさん自身は、クローズアップ現代NHKスペシャルと言った社会番組担当であり、お昼のニュースやニュース7といったニュース番組の直接の担当ではないので、すぐに変更といったことは難しいようですが、「『たらい回しではなく、受け入れ不可能』という、現状とその現状にあった表現を訴えていきたい」とのことでした。


この点については、単純に嬉しかったです晴れ


とこういった内容で30分ほど電話でお話をしてみました。
放送日が決まったら、教えてくれるとのことでしたので、どのような内容の番組になったのか、見る気満々です。


新聞でも、社会部の医療系を担当する記者が現場を取材し、医療崩壊の現状について、まともな記事を書いたと思ったら、3日後ぐらいに論説委員が社説に、現状を理解していいない「現場バッシング記事」を書いたりすることがあるのですが、そんなことを思い出しました。


P.S
今回お話したディレクターさんは、クローズアップ現代後期高齢者医療制度の回の直接の担当者ではないとのことでしたが、後期高齢者医療制度医療崩壊については取材を続けていくとのことでした。