成年後見制度市町村長申立のまとめ0(2008.3.3)の続きです。
注意!
法律の専門家ではなく、勘違いしている可能性もありますので、詳しくは法律の専門家等にご確認ください。
市町村長申立の手続きの前に、成年後見制度の概要について説明します。
成年後見制度とは
「精神上の障害(知的障害・精神障害・認知症など)により、判断能力(事理弁識能力)が不十分な成年者を保護するために、本人の代わりに法律行為を行うor補助するものを選任する制度」です
今まで「禁治産・準禁治産」と呼ばれていた制度に替わって設けられました。
1.法定後見と任意後見
任意後見 | 本人が判断能力が十分なうちに、前もって候補者と契約 |
法定後見 | 本人の判断能力が衰えた場合に、本人の権利擁護を図るために家庭裁判所の審判を経て行う |
市町村長申立で行うのは「法定後見」です。
後見制度は、本人の判断能力の程度によって3つの類型に分けられます。
2.後見制度の3つの類型
後見 | 保佐 | 補助 | |
対象者の 能力 | 常に能力を欠く | 能力が著しく不十分 | 能力が不十分 |
医師による 鑑定の要否 | 原則として必要 | 原則として 診断書で可 | |
申立時の 本人同意 | 不要 | 必要 | |
同意(取消) 権の範囲*1 | 日常生活に関する 行為以外の行為 | 民法13条1項に 定める範囲*2 | 民法13条1項に 定める範囲 *本人の同意が必要 |
代理権の 範囲*3 | 包括的な代理権と 財産管理権 | 家庭裁判所が定める特定の法律行為 *本人の同意が必要 |
3.*1の同意権と取消権について
同意権 | 後見人等が同意した場合に法律行為が有効になる (被保佐人・被補助人が持っている) |
取消権 | 後見人等が後から本人の行った法律行為を取り消すことができる (後見人・保佐人・補助人が持っている) |
という、微妙な違いがあります。
「取消権を使ったら、法律行為がなかったことに」
「同意権の場合は、同意しなかったら、法律行為がなかったことに」
ということで、同じ結果につながるので、表裏一体な関係ですね。
なお、被後見人は「判断能力がない」とされており、法律行為自体を行うことができませんので、同意権がありません。(被後見人の法律行為は無効)
4.*2の民法13条1項について
こちらをご参照下さい(外部リンク)
→このページは移転しました。│民法条文解説.com
ただし、どの類型であっても
1 | 日常生活に関連する行為 食料品や衣料品・嗜好品等の購入、バスへの乗車、水道光熱費の支払いなど |
2 | 本人だけで決めるべき(一身専属的)事項 婚姻や遺言などの身分行為。治療行為への同意など |
について取り消したり、同意しなかったりすることはできません。
取消権があることで、悪徳な訪問販売により行った契約(法律行為)を取り消すことができます。
5.*3の代理権について
代理権とは、本人に代わり法律行為を行うことができる権利(効果帰属主体は本人へ)です。
後見 | 財産に関する包括的な代理権や財産管理権 |
保佐及び補助 | 家裁が与えた特定の法律行為 |
ただし、後見であっても、「本人が住んでいる家(居住用不動産)」については、本人に与える影響が非常に大きいため、裁判所の許可が必要となります。
代理権があることで、本人が寝たきりで施設入所しているが、家族がいない場合などに、成年後見人等が、施設入所サービス契約の更新を行うことができます。
このように、同意権・取消権・代理権・(追認権というものあるらしいですが、よくわかりません)を使い本人の福祉と権利を擁護していくための制度が「成年後見制度」となっています。
6.デメリットについて
被後見人 | 選挙権・被選挙権を失います。*1 |
被後見人 被保佐人 |
国家公務員*2 地方公務員*3 医師*4 弁護士*5 取締役*6 と言った職業役職には就けません |
特に、後見の場合の「選挙権喪失」については、知らない方が多いようですので(自分も、市長申立に関わるまで知りませんでした)、十分に注意してください。
成年後見制度の大まかな概要については、これで終わりです。
◇シリーズ一覧
○成年後見制度市町村長申立のまとめ0(2008.3.3)
○成年後見制度市町村長申立のまとめ1(2008.3.31)
○成年後見制度市町村長申立のまとめ2(2008.6.3)
○成年後見制度市町村長申立のまとめ3(家裁編)