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就職氷河期以降の非正規雇用急増で将来の生活保護20兆円増?


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非正規雇用で生活保護20兆円−シンクタンク試算 CBニュース(2008.4.30)

1990 年代のバブル経済崩壊から2000年代初めにかけての「就職氷河期」といわれる時期に急増した非正規雇用について、シンクタンクの総合研究開発機構(NIRA)は4月30日までに、この時期の非正規雇用者が低水準の賃金で十分な年金を確保できないまま、退職後に生活保護受給状態に陥った場合、20兆円程度の追加的な財政負担が生じるとの研究報告書をまとめた。(以下略)

研究報告書全文はNIRAのサイトにあります。

就職氷河期世代のきわどさ―高まる雇用リスクにどう対応すべきか 総合研究開発機構(NIRA)

より一部引用しています。

(2)就職氷河期に発生した非正規雇用の深刻度

■将来に発現する貧困問題としての就職氷河期非正規雇用
非正規雇用の問題点について指摘してきたが、特に本報告では就職氷河期に大きく増加した非正規雇用の問題に注目する。技術革新などの構造変化を背景として発生する労働の二極化により低賃金雇用に対する需要が増加し、これが傾向的に非正規雇用をおしあげている点については留意が必要である。しかしながら以下に示すように就職氷河期に増加した非正規雇用の規模は社会的にみても深刻なものであり、現時点ではそれが明確に認識されていないおそれがある。
就職氷河期に正規採用されずに失業もしくは非正規雇用となった場合には、現在20 代後半から30 代半ばにあって引き続き非正規雇用状態を続けている可能性が高い。しかし、非正規雇用で年収200 万円程度であっても、親と同居したり親からの経済的な支援を得ながら生活している場合には貧困問題として現時点で表面化することはない。またこの年齢層で単身で生活している場合でも、すぐに生活困窮世帯に陥る可能性は低く、生活保護認定の基準が厳しいことから生活保護世帯として認定されることもない。したがって現時点では低賃金・低所得は結婚・出産への障害となるなどの問題はあっても、貧困問題として現れてくる段階にはない。

■70 万人を上回る大規模な将来高齢生活困窮者に対する生活保護費用は累計で約20 兆円
すでにみてきたように現在問題視されている非正規雇用のなかでは、就職氷河期に大量に発生した非正規雇用者の規模の大きさが目立っている。バブルが崩壊する前の非正規雇用者比率、無業者比率とバブル崩壊後に経済状況が悪化した時期に大幅に上昇した比率との差を景気悪化による需要要因と考えて、就職氷河期を通じて需要要因により増加した分の非正規雇用者、無業者の規模を試算すると120 万人程度となる。
新卒段階で正規採用されなかった若年層の正規雇用への転換は難しく、彼らの大部分が低水準の賃金のまま年金対応もできずに高齢化に突入するという前提で生活保護に必要となる追加支出を試算すると約20 兆円程度の規模となり、社会的にも深刻な影響を与える規模となる(資料3:就職氷河期世代の老後に関するシミュレーション参照)。

非正規雇用で年収が200万円であっても、現在は親と同居している等、生活保護の基準には当てはまらないが、このままの賃金が続いたまま高齢化に移行し、生活保護が適用されると20兆円もの財政負担が発生する」という内容です。

この件に関する政策提言も報告書にありますが、斜め読みして、まとめてみました↓

3.政策提言:雇用も含む経済社会制度の総合的な見直しが必要

グローバル化、IT化への対応に必要な雇用慣行と雇用制度の総合的見直し
グローバル化、IT化、経済社会環境の変化などにより非正規雇用が増えてきた。
しかし、雇用施策はこれまでの日本型雇用に頼っており(=企業に頼っており)
雇用保険などは守備範囲が限定的であるなど、対応しきれておらず、若年層を中心に雇用制度を統合的に見直す必要がある。

■雇用に関するセーフティー・ネットの再設計
これまでの日本型雇用(正規雇用中心)であり、非正規雇用ワーキングプアに対しては十分ではない。社会保障の枠組みを若年非正規雇用にも対応しつつ全体的なバランスも取れるように再設計する必要がある。

非正規雇用から正規雇用への実効性のある転換支援政策
非正規雇用から正規雇用へ転換するためには、雇用者(働いている人)の能力向上が必要であるが、それを雇用側のみに負わせるのは現実的ではなく、公平・公正な外部労働市場の整備が必要である。

*外部労働市場とは、企業外から企業への労働力の移動、新採用も中途採用も転職などを指します。一方、企業内での昇進や配置転換は内部労働市場といいます。
そのためには、明確な内容の雇用契約を法律で強制し、「ジョブカード」など一定の資格要件を満たす場合は、一定の比率での採用を義務づけるべき。
*ジョブカードとは、厚労省が提供している「履歴書」みたいなもので、技能や職業訓練プログラムの受講歴などを、客観的に証明するもの・・・らしいです。
福祉から雇用へ
イギリスのニューディール政策で採用された、「福祉から雇用へ」という方針にそった制度設計を目指すことが望ましい。若年非正規雇用者を就職支援プログラムに参加させるための十分な動機付けを行うには、所得保障給付の仕組みも含む雇用を巡る社会保障制度の再設計が必要となる。低所得労働による貧困からの脱出をめざす努力を喚起するなど、雇用者自身の意欲を高めるための仕組みとしては、勤労税額控除の制度は有効な手段と考えられる。

■就職に結びつく教育、研修の重要性と企業の受け入れ
学校、企業、行政がそれぞれの役割を果たしながら制度変革を行う。

■雇用支援策の科学的な政策評価が不可欠
「若者自立・挑戦プラン」などを実施しているが、総合的な評価がなされたとは言えない。
実証分析に基づく客観的な政策評価を行うことが、就職氷河期非正規雇用対策の制度再設計には不可欠。

■求められるライフ・ワーク・バランスの確保
正規雇用であっても長時間や心理的重圧など過重な負担を伴うことがあり、「正規雇用化」ですべての問題が解決するわけではない。本来の正規雇用は、社内での十分な能力開発を通じて、地域コミュニティでの長期安定雇用確保を目標とするのがよい。しかし、グローバル競争の下で短期的な収益性のみを優先する経営方針とは相容れない部分もある。雇用制度全体の制度設計の方向性について、国民的な合意の形成が必要とされている。

「20兆円シミュレーション」や上記にあがっている「イギリスのニューディール政策」については、

就職氷河期世代のきわどさ―高まる雇用リスクにどう対応すべきか

の下の方にある、「III.資料編」に詳しい資料があります。

◇参考リンク
総合研究開発機構(NIRA)
総合研究開発機構 Wikipedia
大手町博士のゼミナール ジョブ・カード 読売新聞
New Deal The Department for Work and Pensions (DWP:英国労働年金省)