◇国立高度専門医療センターで看護師“バーンアウト” CBニュース(2008.5.21)
今国会で独立行政法人化が審議されている「国立高度専門医療センター(ナショナルセンター)」で、看護師が2人夜勤を強いられ、夜間の緊急対応時に1人の看護師が30人以上の患者を診なければならない場合もあることが、5月21日にキャリアブレインに寄せられた関係者の証言で明らかになった。「看護師の緊張感と精神的負担は想像を超えるもので、患者に安全な医療や看護を提供していく上で問題がある」と訴えている。
国立高度専門医療センター(ナショナルセンター)とは、「特定の疾患その他の事項に関し、診断及び治療、調査及び研究並びに技術者の研修を行う」ことを目的に、設置されている施設のことですが、(厚生労働省設置法第16条参照)
2008年5月現在、全国に6センター8病院設置されています。
○国立成育医療センター(東京都世田谷区)
○国立がんセンター中央病院(東京都中央区)
○国立がんセンター東病院(千葉県柏市)
○国立国際医療センター戸山病院(東京都新宿区)
○国立国際医療センター国府台病院(千葉県市川市)
○国立精神神経センター武蔵病院(東京都小平市)
○国立長寿医療センター(愛知県大府市)
○国立循環器病センター(大阪府)
そのナショナルセンターの(循環器病センターと長寿医療センターを除いた)6病院85病棟のうち
50病棟が夜勤看護師3人以下、15病棟では準夜帯・深夜帯とも2人体制となっているようです
表1:ナショナルセンター85病棟の深夜帯における看護体制(全日本国立医療労働組合調査)
ナショナルセンターともなってくると、国の最先端医療センターということで、入院されている患者さんは看護度の高い方が多いと思われますが、そんな病棟でも「夜勤2人体制が当たり前」の状態・・医師も看護師も全然足りていません。
看護師不足は、夜勤の回数増にもつながっており、成育医療センターでは、夜勤に従事した看護師のうち、夜勤9回以上が55%と過半数を占めています。
その影響なのか、ある病棟(夜勤2人体制)では、看護師17人中5人が退職するなどしており、成育医療センターの離職率は14-17%(全国平均12.4%)にも達しています。
記事中に全日本国立医療労働組合調査「国立高度医療センター9回以上夜勤」がありましたので、グラフ化してみました。
表2:国立高度医療センター9回以上夜勤(全日本国立医療労働組合調査) 単位:人
4月は新人が準夜・深夜帯につかないことが多いために、スタッフの夜勤回数が一時的に増えることはありますが、この調査は2007年10月ですので、ナショナルセンターでも「夜勤9回当たり前」が恒常化していると言えます。
「国循のICU医師が全員退職」「がんセンター麻酔科医の半数が退職」と医師不足が先行しているナショナルセンターですが、「看護師不足→看護師一人当たりの負担増→離職→看護師不足」と看護師の離職が加速度的に増えていくと「医師も看護師もいない」状態となり、病院自体が回せなくなります。
厚労省直轄の旗艦病院ですら、ふたを開けてみると崩壊寸前なのが日本の医療の現状ですね。
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