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特定保健指導、85%の自治体で無料のワケ


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メタボ健診、無料指導8割…財政難に追い打ち 読売新聞(2008.5.12)

□低受診率での罰則回避


メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の予防のため4月から始まった「特定健診・保健指導(メタボ健診)」で、全国の市町村のうち健診を受けて新たに行う保健指導を無料にするのは、85%に上ることが読売新聞の調査でわかった。
無料化は、保健指導の実施率(受診率)などが低い市町村にペナルティーとして科せられる後期高齢者医療制度(長寿医療制度)への負担増を回避する狙いがある。一方で9割の市町村が国に財政支援を求めており、財政難と新制度との板挟みに惑う市町村の実態が浮き彫りになった。

確かに、特定保健指導の無料化は財政負担にはなるんですけど・・・85%もの自治体が無料化を選んだのにも理由がありまして・・・


「自己負担導入で受診者減になって国の基準を達成できずペナルティ払うよりは、無料化にしてペナルティを回避した方がいい」


という、理由です。


下記で、試算をしてみました。長くなりますが、興味のある方は、ぜひご覧ください。
自治体をはじめとした医療保険者が、受診率向上にがんばっている理由がわかるかもです。

どうして無料化にした方がいいのか!?の試算

1.後期高齢者支援金の試算

2007.11.16の記事「特定健診・特定保健指導情報(3)ペナルティの試算」でおおざっぱに試算してみましたが


人口10万人(国保加入者2万人)のB市の後期高齢者支援金負担は6億4800万円となります。


ただ、中日新聞(2008.5.16朝刊)によると「2008年度の後期高齢者支援金は平均で約3万1000円」らしいので、2万人×約3万1000=約6億2000万円がより正確ですね。(おお!おおざっぱな試算な割には、当たっていた)

2.ペナルティの試算

さて、特定健診・特定保健指導では、国が示した基準(行政用語では参酌標準。注:一番下に載せました)をクリアしないと、ペナルティが科せられます。ペナルティの内容は「基準をクリアしないと、後期高齢者支援金を10%多く支払ってね」というものであり、約6億2000万円の10%となると6200万円也です。

3.特定保健指導にかかる費用

ここからまた、B市(人口10万人、国保加入者2万人)に登場してもらって「おおざっぱな試算」をしますが

  • 特定健診受診率:20%×国保加入者2万人=特定健診受診者数4000人
  • 受診者のうち積極的支援:15%=600人 積極的支援2万円とすると1200万円
  • 受診者のうち動機付け支援:10%=400人 動機付け支援5000円とすると200万円(受診率や積極的支援等の割合、費用は国の推計に基づきます。うろ覚えです)


特定保健指導にかかる費用は合計で1400万円となります。

4.まとめ
  • 特定保健指導の無料化にかかる費用1400万円
  • 基準を達成できなかったときのペナルティ6200万円


と、おおざっぱな試算が出ました。(ざっぱなので間違っていたらごめんなさい)


ところで、健診受けた後に「特定保健指導が必要なのですが、メタボリックシンドロームなので積極的支援となります。保健指導料は2万円です」と言われて、特定保健指導を受ける方がいるかは微妙です。1割の「2000円」と言われても、国の基準値の45%もの方が受けてくれるかは・・微妙です。でも、無料にすると受けてくれる方が増えるはずです。

となると、1400万円かけて6200万円を回避した方がいいわけでして、85%もの自治体が特定保健指導無料化に踏み切ったのは、こういった理由があるからです。

5.お願い

後期高齢者支援金は、保険税(保険料)でまかなわれています。そしてペナルティとなると、保険税増となる可能性が出てきます。

特定健診・特定保健指導は、自分の身体の状況を知り、生活習慣を見直すことで病気を予防できる機会です。そして、保険税増の回避にもつながります。受診よろしくお願いしますm(__)m

特定健診・特定保健指導のお問い合わせ先

◇参考資料:国が示した基準
 1.特定健康診査の実施率(受診率)
  ・H24年度の受診率が60%以上
  ・H27年度の受診率が80%以上
 2.特定保健指導の実施率
  ・H24年度の対象者の45%以上
 3.メタボリックシンドロームの該当者及び予備軍の減少率
  ・H24年度のメタボ該当者・予備軍は、H20年度よりも10%以上減