最近、厚労省の看護系技官や国立保健医療科学院・国立看護大学校といった教育研究機関、都道府県の保健師など、お歴々な方々が、「保健師は地域を『みる、つなぐ、動かす』能力が必要だ」と口を揃えて言ってますが、なんかしっくりこないんですよね。
「保健師は地域住民を全員知っていて、全員に支援できないといけないのに、今の若い保健師は家庭訪問ができてなくてダメ。保健師2007年でベテランが大量退職するこ、これまでの保健師活動で培ってきた経験に基づく貴重な知識と能力が継承できなくなって大変だわ」とでも、言いたげで。
介護保険制度もなく、保健師以外の専門職もおらず、配置も地区分担制で「すべて私たちがやるの」な時代(お歴々な方々が現場にいた時代)だと、「全員に支援できないといけない」という理屈もわかりますが
今は、役所には管理栄養士や社会福祉士・精神保健福祉士、大きいところでは運動指導士や理学療法士と言った専門職が配置され、(制度自体がいいかどうかは別にして)介護保険制度や自立支援法などにより、在介や地域生活支援センターなどの地域での生活を支援するハードも整備されており、「すべて私たちがやるの」な時代ではありません。
「みる、つなぐ、動かす能力が必要だ」という幹の部分はわかるのですが、検討会議事録や報告書を読んでいると根っこの部分や枝葉の部分に関しては、どうも、お歴々の方々との間に、違和感を感じます。
そもそも先人が培ってきた「みる、つなぐ、動かす」能力ですが
- 地区担当制は地域の「雰囲気をつかむ」のにはよかったのですが、レセ分析などの科学的な視点はかけており、「地域全体を見た気分」になっていただけでは?
- 特定保健指導が導入されたのは、これまでの生活習慣病に対する保健指導が効果なかったのからでは?
- 「すべて私たちがやる」も育児掲示板などを見ると「保健師によって言っている事が違う」など、守備範囲が広い代わりに内容が薄かったのでは?
という印象もありますし。
どうも上(厚生労働省看護系技官・看護協会・国立保健医療科学院・国立看護大学校+都道府県保健師)が継承させたがっている「みる、つなぐ、動かす」能力と市町村の保健師が必要だと考えている「みる、つなぐ、動かす」能力は、微妙に異なっている気がします。
この意識の乖離の現れかどうかは知りませんが
市町村の保健師が自主的に集まって、業務外で学習会を行うことが多いです。(成功事例を持っている市町村の保健師等を講師に招聘するなど実践的な内容)
これも、都道府県主催の研修会は「無理にいかなくていいなじゃない?」だの「実際行ってみたけど、対応が遅れているね」「受けたい内容じゃなかった」と言うことが多く、多くの市町村が「都道府県をあてにしてられない」と思い始めたからでしょうか?
市町村が国・都道府県をあてにせず自主的に動く。まさに、「地方分権の流れ」の一つですね。
と、言ってしまったら身も蓋もありませんが
◇参考リンク
○特定健診・保健指導における保健師の役割(PDF) 保健医療科学 第57巻目次
○『保健師のベストプラクティスをどのように継承するか』(PDF) 平成20年度保健師中央会議資料
○保健師の2007年問題に関する検討会 報告書(PDF) 平成19年度保健師中央研修会資料
○保健指導における「保健師のアイデンティティ」とは? Watchan通信