新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)とN95マスク(2009.4.28)で一度、マスクについては触れたのですが、マスクが完売する地域がでてきたり、ネットで高値で取引されたりとしているようなので、ここでマスクについてもう一度おさらい。
マスクの種類
防塵などの産業用マスクを除くと、一般的には次の3種類のマスクがあります
種類 | N95マスク | 不織布製マスク サージカルマスク |
ガーゼマスク |
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画像 | |||
対象 | 治療スタッフや感染者と濃厚接触する方向け | 医療従事者向け 一般家庭向け |
一般家庭向け |
備考 | 正しく装着しないと意味がない。 密閉性が高く、長時間装着していると息苦しくなる*1。 日常生活での使用には向いていません。 |
病院でも標準予防策として使用されているマスクです。 一般家庭用としては、厚労省はこちらを推奨しています。 |
新型インフルエンザ予防としては推奨されていません。 保湿性があります。 |
新型インフルエンザ対策として
では、「どのマスクがいいのか」ですが、国の資料を見てみると
○ブタインフルエンザに関するQ&A(保健所用:暫定版)PDF
Q:ブタインフルエンザの感染防止のためにN95マスクを購入するべきですか?
A:N95マスクの使い方には専門的知識とフィットテストなどの事前準備が必要ですから、一般の方には不適切な防護具とされています。一般的にはサージカルマスクを着用し、手洗いやうがいを励行するようにしてください。
○新型インフルエンザ流行時の日常生活におけるマスク使用の考え方 PDF
(3)マスクの分類とその性能
マスクは、一般的に、家庭用マスク、医療用マスク、産業用マスク等に分類される。国民が日常生活において使用するマスクは、家庭用マスクに分類される。主な家庭用マスクには、不織布(ふしょくふ)製マスクとガーゼマスクの2種類がある。新型インフルエンザ発生時に使用する家庭用マスクとしては、不織布製マスクの使用が推奨される。
(1) N95マスク(防じんマスクDS2)について
現段階では、N95マスク(防じんマスクDS2)は、新型インフルエンザの感染予防策として、日常生活において使用することは想定されていない。
ただし、新型インフルエンザの患者に接する可能性の高い医療従事者については、N95マスク(防じんマスクDS2)のような密閉性の高いマスクの着用が勧められている。(参照:医療施設等における感染対策ガイドライン)
N95マスクのNとは耐油性がない(Not resistant to oil)という意味であり、95とは0.3μm以上の塩化ナトリウム結晶の捕集効率が95%以上という意味である。N95マスクの認定は米国労働安全衛生研究所(NIOSH)が認定している。
産業用の防じんマスクについて、わが国でも国家検定が行われており、DS2というクラスのものがN95マスクと同等の検定基準とされている。
N95マスク(防じんマスクDS2)を適正に使用するためには、自分の顔にあった正しいマスクを選択するためのフィットテスト及び装着時に正しく装着出来ているかを確認するためのユーザーシールチェック等十分な知識が必要である。また、期待される効果を得るには顔とマスクの高い密着性を必要とするため、長時間の着用は息苦しくなることがある。
N95マスク(防じんマスクDS2)の使用にあたっては、手がマスク表面に触れた場合には、手にウイルスが付着する可能性があるため、手洗い等を行う必要がある。なお、N95マスク(防じんマスクDS2)は、一般に症状のある人の使用は不向きであり、咳エチケット用としては不適切である。
家族内で新型インフルエンザに感染した者を世話する等、感染者と濃厚な接触が避けられない場合は、医療従事者以外の者も、N95マスク(防じんマスクDS2)を使用することは、適切な教育・訓練が行われることを前提として今後も検討する価値があると思われる。
まとめると、
- 国が一般家庭に推奨しているのは、不織布マスク(サージカルマスク)
- N95マスクを正しく装着するためには適切な教育・訓練が必要
- N95マスクは治療看護にあたる医療従事者向け
- ただし、感染者の看護にあたる家族や感染者と濃厚な接触が避けられない場合は、正しく装着できることを前提につけてもいいかも
という感じです。
マスクについての注意点
マスクについていろんな情報が飛び交ってます。中には怪しい情報もあったりするので注意して下さい。(不安を煽っている業者もいますし)
情報 | コメント |
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香港でSARSが院内感染したのは医師がつけていたマスクがN95マスクじゃなかったから。やはりN95マスクが必要だ | 治療にあたる医療従事者に対してはN95マスクが推奨されています。が、だからといって一般の方が日常生活でN95マスクをつける必要はありません。 |
感染予防としてサージカルマスクを売っている業者がいるが、必ずN95マスクを装着することが必要 | N95マスクをつけて日常生活をおくるのは困難です。息苦しくなります。 |
ウイルスを99.9%カット | 99.9%カットしているのはウイルスじゃなくて、ウイルスを含む飛沫(唾とか痰とか)であることが多いです。 小さく書いている場合もあるよ。 |
N95レベルのマスク N95マスクで使われている素材を使用 |
四角いタイプのマスクでは、マスクがN95レベルでも顔とマスクの隙間があるので、ウイルスが簡単に入ってこれます。正しく装着したN95マスクとは、全然違います。 |
○○成分配合! ○○パワーでウイルスをシャットアウト! |
だから四角いマスクでは、隙間があるんだってば |
予防に最適なのはWHO・厚労省推奨のN95マスク | WHOがN95マスクを推奨しているのは医療従事者についてです。また厚労省も一般家庭向けには不織布マスクを推奨しています。 |
マスクがあれば感染しない | 感染予防よりも、他人にうつさない「咳エチケット」としての効果が大きいです。ただ、マスクをしていると直接鼻や口を触らないので、そういった意味では効果はあります。 まず大切なのは、石けんを使った十分な手洗い。そして健康の維持(十分な栄養・睡眠・休養)*2、*3 うがいは・・WHOやCDCでは触れられていません。厚労省は推奨しています。 |
みたいな、感じです。
N95マスクを買った方へ
というわけで、日常生活で装着するのはおすすめしない(というか息苦しくて無理だと思う)N95マスクですが、せっかく買ったのであれば、いざというときのために、正しい装着法について学びましょう。
長いですが、正しい装着法以外では、N95マスクの性能は発揮できません。
ちなみに、N95マスクはサージカルマスクと比べて非常に高価ですので、「へたれるまで使ってみよう」と思うかもしれませんが、どんなに長くても1日以上使ってはいけませんので、注意して下さい。(下に補足をつけておきました)
話は変わりますが、一部の業者に見られる「必要以上に不安を煽る」「不適当な説明(WHOやCDCの医療従事者向けのアドバイスを切り貼り)」を見ていると、医薬品ネット販売が規制されるのも、仕方ないかなという感じですね・・。
補足「なぜ、マスクを再利用してはいけないか」
- そもそも、使い捨てが前提なので、複数回の使用を想定したつくりになっていない。
- へたったマスクでは、顔とマスクとの間に隙間が出来やすくなってしまう。
- N95の遮断効果が、マスク内の湿気によって落ちている。
- 使用後のマスクは、「外側→汚染、内側→清潔」の状態だけど、内側を汚染させずに保管するのは至難の業。さらに、内側を汚染させずに取り出すのは・・自分にはできません。
- あと、3秒ルールは使えません。少しでも内側に触れるとダメです。
- 最低でも1日1枚、できれば1日2-3枚が望ましいです。
- (そもそも論としては、N95マスクを日常生活でつけること自体が以下略)