◇【日本の未来を考える】東京大・大学院教授 伊藤元重 「医療貯蓄制度」の必要性(2009.8.8) MSN産経ニュース
一人一人の国民が検査や予防にお金を使うことは、その人の健康を守るだけでなく国民全体の医療費を大幅に下げる上でも大きな効果がある。経済政策として考えても、国民が予防や検査をするために使う費用を税控除などの方法で支援することの意義は多い。スポーツジムのような施設利用でも、それで健康維持ができるなら社会的な意義は大きい。そこで、医療費の定義を広げて、予防や検査のための費用も納税の際の所得控除の対象とすることも考えられる。
ただ、多くの人にとって医療費を確定申告で控除申請するのは煩わしい行為ではある。そこで、「医療貯蓄制度」を創設することが考えられる。ここに預けられた資金は免税の対象とする。利子に税金がかからないだけでなく、そこに貯蓄される資金は所得から控除され、所得税の対象とならないとしてもよい。相続を認めたってよい。ただし、いったん振り込まれたら、予防・検査や運動も含めて、広義の医療にしか使えないという制約を受ける。ここでは、シンガポールの制度を説明しているわけではなく、あくまで日本での新たな制度の可能性を模索しているので、医療貯蓄制度という名称をつけてみた。
多くの国民にとって健康は重要な関心事である。医療貯蓄制度を利用すれば、免税措置を受けながら健康維持や検査に利用できるとなれば、より多くの資金が医療健康分野に流れていくことが期待される。もちろん、病気になって入院などをするさいの差額ベッド代や医療費の自己負担分にもこの貯蓄資金を利用できるようにすればよい。少子高齢化でますます増えていくことが予想される医療費を、すべて現行の医療保険制度や財政資金の投入だけで支えることは難しい。国民が自らの意思で医療貯蓄制度を利用し、より多くの資金が医療健康分野に流れ込んでいく仕掛けが必要なのだ。(いとう もとしげ)
「医療貯蓄制度を新たに創設し利用する方が煩わしいんじゃないの?」とか「広義の医療の範囲」とか「金融機関の商品増やすのがメインの目的だったりして」とか気になりますが
それはおいといて、「あくまで日本での新たな制度の可能性を模索しているので、医療貯蓄制度という名称をつけてみた。」とのことですが、同じ制度を経団連が2007年に提言していたような・・・
◇「医療貯蓄口座」と保険医の資格更新制も提言−経団連(2007.2.21)
◇医療貯蓄口座新設を提言 経団連、自己負担支援で 共同通信社
日本経団連は20日、国民が老後の医療費自己負担に備えるため、財形貯蓄の医療版に当たる「医療貯蓄口座」の新設などを求める提言を発表した。
医療貯蓄口座は、積み立てた資金の利子については非課税とし、有利な貯蓄手段として国民への普及を図る。健康保険の適用外で、費用が自己負担となる高度先進医療を国民が広く受けられるように支援するのが狙い。
提言は、最新の知識や技術を扱える医師を増やし医療の質を高めるため、保険医資格について第3者機関が試験で更新の是非を決める資格更新制の導入を要望。医療費の効率化に向けて、長期の診療報酬について、疾病ごとの包括定額化なども求めた。
経団連が「医療貯蓄口座」なるものを提唱しているのですが・・
孫引きしてしまった(´・ω・`)
◇比較
名称 | 医療貯蓄制度 | 医療貯蓄口座*1 |
---|---|---|
発案者 | 伊藤元重 | 経団連 |
概要 | 預けられた資金は免税の対象とする。利子に税金がかからないだけでなく、そこに貯蓄される資金は所得から控除され、所得税の対象とならないとしてもよい。 相続を認めたってよい |
積み立てた資金の利子は非課税。 同口座は、民間金融機関等に設け、個々人が多様な民間の保険商品や金融商品の中からそれぞれのニーズに応じて選択を可能とする |
適用範囲 | 予防・検査や運動も含めて、広義の医療にしか使えない | 保険診療の自己負担分や保険外診療の際の費用、あるいは健康増進につながる一定の支出等に充てることを認める |
その他 | 国民が自らの意思で医療貯蓄制度を利用し、より多くの資金が医療健康分野に流れ込んでいく仕掛けが必要 | 継続的に積み立て、繰越しが可能な制度とすることで、疾病リスクや医療支出が増大する老後に自ら備えることが可能となる。 |
似てますね。まるで御用g(以下略
経団連な記事一覧
- 連合が考える医療制度改革「2025年の医療のあり方」←経団連と同じ内容(2007.12.9)
- 2007年度日本経団連規制改革要望(2007.7.28)
- 定期健診項目の安易な拡大に反対-日本経団連(2007.2.25)
- 「医療貯蓄口座」と保険医の資格更新制も提言−経団連(2007.2.21)