国保の納付書に、は「保険料」と書かれている場合と「保険税」(国保税)と書かれている場合があります。
税と保険料・・どっちが正しいの?
と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、結論から言うと、どちらも正しいです。保険料か税かは、市町村によって変わってきます。
国民健康保険法
国民健康保険の根拠法は、その名もズバリ「国民健康保険法」。
この法律に国保の内容*1や対象者*2、「普通会計ではなく特別会計にしなさい」*3など、いろいろ書かれているのですが、保険料については法第76条第1項にその記載があります。
(保険料)
第七十六条 保険者は、国民健康保険事業に要する費用(前期高齢者納付金等及び後期高齢者支援金等並びに介護納付金の納付に要する費用を含み、健康保険法第百七十九条 に規定する組合にあつては、同法 の規定による日雇拠出金の納付に要する費用を含む。)に充てるため、世帯主又は組合員から保険料を徴収しなければならない。ただし、地方税法 の規定により国民健康保険税を課するときは、この限りでない。
「世帯主または組合員から保険料を徴収しなさい」とあるように、国民健康保険は「保険料」が基本です。
が、但し書きの部分にも書かれていますが
「地方税法の規定により国民健康保険税を課するときは、この限りではない」
つまり、「基本は保険料だけど、地方税にしてもいいよ」というのが、国民健康保険料のほかとは違う変わったところです。介護保険では、あくまでも「保険料」であり、「介護保険税」として扱うことはできません。
では、保険料でいいのに、なぜ、わざわざ「国保税」とする自治体があるのかというと、自治体にとってちょっとしたメリットがあるからです。
えっと、ここから先は税制素人の保健師が聞きかじった知識で書いているので、間違っているかも知れません。間違っていたらごめんなさい。コメントで指摘してくださると助かります。
1.国税準用
国税は強いです。どれぐらい強いかというと・・以下例え話
とある方が土地を担保に銀行から融資をしてもらいました。銀行は"とある土地"の1番抵当権を得たので、もしも返せなくなった場合は、1番抵当権を持っている銀行が優先して弁済を受けることができます。登記簿にも「銀行が1番目ですよ」と書かれます。
で、とある方もいろいろ頑張ったのですが返済が困難となり差し押さえられることになりました。銀行さんとしては「残念だったけど、うちが1番抵当だから回収は大丈夫」と思ってます。
通常、このようなケースだと、1番抵当権を持っている銀行が優先して弁済してもらえます。が、実はこの「とある方」は、所得税や相続税と言った国税をかなり前から滞納していました。銀行から融資を受ける前の時点で、納付期限はとっくに過ぎていたとなると話が変わってきます。1番抵当権を持っている銀行よりも「国税」が優先されてしまうのです。
さて、地方税ですが、地方税も国税と同じように優先されます。なので保険料ではなく国保税(地方税扱い)になると、抵当権を無視して、回収することができるのです。
順位 | 債権者*4 |
1位 | 国税・地方税(国民健康保険税) |
2位 | 抵当権の順番 |
3位 | 国民健康保険料 |
これが、保険料より国保税の方が強いという理由です。
2.時効
保険料の時効は2年なのに対し、国保税だと5年です。
国民健康保険法 | 地方税法 |
第百十条 保険料その他この法律の規定による徴収金を徴収し、又はその還付を受ける権利及び保険給付を受ける権利は、二年を経過したときは、時効によつて消滅する。 | 第十八条 地方団体の徴収金の徴収を目的とする地方団体の権利(以下本款において「地方税の徴収権」という。)は、法定納期限(次の各号に掲げる地方団体の徴収金については、それぞれ当該各号に掲げる日)の翌日から起算して五年間行使しないことによつて、時効により消滅する。 |
保険料だと「2年以上前のはもういいよ」となりますが、国保税だと「5年間は時効あるんだよ」となります。
3.さかのぼって徴収
また、国保税だと3年前までさかのぼって賦課できますが、保険料だと2年までです。
国民健康保険法 | 地方税法 |
第百十条 保険料その他この法律の規定による徴収金を徴収し、又はその還付を受ける権利及び保険給付を受ける権利は、二年を経過したときは、時効によつて消滅する。 | 第十七条の五 更正、決定又は賦課決定は、法定納期限(随時に課する地方税については、その地方税を課することができることとなつた日。以下この条及び第十八条第一項において同じ。)の翌日から起算して三年を経過した日以後においては、することができない。加算金の決定をすることができる期間についても、また同様とする。 |
保険料だと「2年分払ってもらいましょか」となりますが、国保税だと「3年分払ってもらいましょか」となります。
まとめ
基本は「保険料」な国民健康保険料ですが、国保税=地方税として扱うことで
- 抵当権が国税水準に
- 時効が2年から5年へ
- さかのぼっての徴収が2年から3年へ
と言った違いが出てきます。権限が高まり、時効は延び、さかのぼって納付できる期間が延びる=納付率を高めることになります。
納付率が高くなったらどうなるの
国民健康保険は、納付率が低いと国の補助金が減ります。つまり、自治体の持ち出しが増えます。
このご時世、財政に余裕のある自治体なんてほとんどありません。そんななかで巨額が飛び合う国保特別会計への国の補助金が数パーセントでも変わると、財政はアップアップになります。なので、どこの自治体も少しでも納付率を高めようとあの手この手を考えています。
そこで「保険料ではなく、保険税とすることで(徴収側にとって)メリットがでてくる」となれば、苦労は「議会を通すこと」だけなので、どこの自治体でも取り入れたくなるものです。
まとめのまとめ
国民健康保険料にするか国民健康保険税(国保税)にするかは、自治体の選択。
ただし保険料より国保税の方が納付率の高いので、「国保税を導入している自治体も多い」
という感じです。