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精神保健指定医資格の不正取得について


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精神保健指定医の資格不正取得ですが、精神医療を根本から崩壊させかねない問題です。

指定医不正取得 精神保健の根幹揺るがす 西日本新聞(2015.4.21)

患者の同意がなくても、都道府県知事や政令指定市長が法律に基づいて強制入院させることを「措置入院」という。そんな人権を制限する権限に関わるのが、厚生労働大臣が指定する精神保健指定医だ。社会的責任は極めて重い。

厚労省が、この指定医資格を不正取得した聖マリアンナ医大病院(川崎市)の医師20人(退職者を含む)の資格を取り消した。一度にこれほど多数の資格が取り消されるのは前代未聞である。

精神科については、他の科とは異なり、本人の同意がなくても強制的に入院させることができる仕組み(措置入院や医療保護入院、応急入院など)が精神保健福祉法で規定されています。

本人の意向を無視した「強制入院」は、憲法で保証されている基本的人権の一つである「身体の自由」を侵すことになるため、その適用については厳格に運用されなければなりません。

治療とは言え、本人の同意がないことから、やっていることは「逮捕・監禁」(拘束は逮捕、隔離は監禁ですね。)ですからね。一般人が同じことをやれば逮捕監禁罪の容疑で捕まります。というよりは、一般科でもやってもダメです。

憲法第31条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

刑法第220条 不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。

ただし、精神疾患については立法や行政、その他の関係機関において「精神障害者であり、かつ、医療及び保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがある場合は、本人の意向を無視してでも入院させて治療を受けさせる必要があるよね」というコンセンサスがあることから、特別に法律(精神保健福祉法)で認められているのが現状です。
そのため厳格に運用しなければなりません。(もちろん、「そもそも身体の自由を侵してはいけない」という意見もあります。)

その「でも入院させて治療を受けさせる必要があるよね(=身体の自由を制限する必要がある)」と判定する指定医の資格が不正に取得されており、実際に判定を行ったケースもあるとわかったため、制度の根幹を崩壊させかねないと大問題になっています。

そして、ここから広がりそうなものが「そもそも指定医制度ってどうなの?」という制度そのものについての議論。

国民へ強制力を伴う行為については、立法機関が定めた法律の範囲や司法機関が認めた範囲で行政機関の職員(立法機関の職員や司法機関の職員が執行することもあるけどね)が執行することがほとんどですが、その中でも「身体の自由を奪う行為」については、警察が被疑者を逮捕する場合でも、裁判官が発付する令状(いわゆる逮捕状)が必要など、かなり慎重に対応しています。

しかし、措置入院や医療保護入院などについては、民間*1の医療機関の医師が指定医として入院や隔離・拘束などの「身体の自由を奪う判定」ができるなど、かなり特殊な状況にあります。

このようなことから

  • 現行の指定医制度でいいのか
  • 安易な強制入院(特に医療保護入院)が行われてはいないか
  • 強制入院は公権力として公立医療機関(職員は公務員)でしか担えないようにするべきだ*2

といった「そもそも論」がでてきそうですね。

*1:「みなし公務員」の規定とかもありますが・・

*2:現在の公立精神科病院だけではオーバーフローになりますが