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「割りばし事件は医療過誤事件」産経の偏向報道


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医療過誤の立証なお壁高く 割りばし事故訴訟 MSN産経ニュース(2008.2.12)

判決は、複数の医師の証言を基に、隼三ちゃんの口腔(こうくう)内には大量の出血がなく、口の中を見るだけでは折れた割りばしの先端が確認できなかったと認定。

その上で、折れやすい割りばしが頭蓋骨(ずがいこつ)を傷つけずに、脳に刺さって傷を負うという医学的な知見は当時なく、症例の報告もなかったと指摘したうえで、「当時の医療水準に照らせば、脳内の損傷は予見できなかった」と結論づけた。

医療水準を基準とした場合、どうしても医師側の意見に判断の根拠を求めがちだ。原告側は病院側からの資料入手が難しく、刑事裁判の記録を証拠として提出したが、判決は医療過誤事件の立証の難しさを改めて示したといえる。(福田哲士)

この福田という記者は、新聞記者なのに「医療事故と医療過誤の違い」が理解できていないのかな?



○医療事故
医療に関わる場所で、医療の全過程において発生するすべての事故をいう。医療過誤(医療ミス)とは同義の言葉ではないので注意が必要。予測不能や回避不可能であった事例や、患者だけでなく医療従事者に不利益を被った事例も含む。


医療過誤(医療ミス)
医療事故の発生の原因に、医療機関・医療従事者に過失(医療従事者が当然払うべき業務上の注意義務を怠り、これによって患者に障害を及ぼした場合のこと)があるもの



「当然払うべき業務上の義務注意」というのは、記事にもありますが、最高裁が昭和57年に「基準は診療当時の医療水準」と判示しているため、「診療当時の医療水準からして、当然行うべきであった業務や注意義務を行わなかった」場合が、医師の医療過誤と言えます。


が、この事件では

1.口腔内の出血や神経症状などがない、意識レベルもJCS-2
2.家族は「割りばしで突いた」とだけ伝えており、「破片だけが見つかった」「割りばしが折れていた」との情報は医師には伝わっていない
3.他の医師も「当時の状況で、割りばしが刺さっていることを予見するのは不可能」と指摘


といったことから、裁判長は「当時の医療水準や受傷状況から、割りばしが脳を損傷させた可能性は診断できなかった」と指摘し、根本医師の過失を否定しました。医師の過失ではないので、医療過誤事件ではなく、医療事故事件なのですが


医療過誤の立証なお壁高く」というタイトルや「判決は医療過誤事件の立証の難しさを改めて示したといえる。」という締めの一文を見る限り、福田記者は、「判決なんて関係ない。おれの判断は医師の過失だ」と考えているようです。


医療側も裁判所も「医療事故。当時の医療水準では予測も回避もできない」と言っているのに
「医師に過失があった医療過誤事件」と言い張る記者は、何を根拠に記事を書いているんでしょうか?


当時の医療水準を超えた業務ができるなら、福田記者には是非とも救急医療の現場で働いて欲しいものです。