つくづく、官僚は組織づくり(天下り先)・制度づくり(お金)がうまいことを実感させられます。
◇産科補償制度、「余剰金は返さない」 CBニュース(2008.9.16)
「余剰が出るのではないか」「財務の透明性を要求すべき」―。来年1月から「出産育児一時金」を3万円引き上げることを承認した厚生労働省の社会保障審議会医療保険部会(部会長=糠谷真平・国民生活センター顧問)で、産科医療の無過失補償制度(産科医療補償制度)の運営に対する注文が相次いだ。一分娩当たり3 万円の掛け金と国からの補助金などを合わせると、余剰金が生じるのではないかとの指摘に対し、厚労省側は「(重度脳性まひの)原因究明も一つの大きな柱になっている」と理解を求め、余剰金が出ても制度に加入している分娩機関に返還する予定はないと回答した。
産科医療補償制度というのは「出生時に2000g以上で在胎週数33週以上で脳性麻痺となった場合で、身障1級か2級の重度脳性麻痺児に、補償金3000万円を支払う」という制度です。なお、先天性の脳性麻痺は補償適用外。
医療機関は1例につき3万円の保険料を払いますが、その代わりに出産一時金が35万円→38万円に引き上げられることになっています。
さて、この制度ですが
- 1.日本の年間分娩数は年間100万件
- 2.保険料は3万円
- 3.厚生労働省が想定する「補償される重度脳性まひの発生件数」は年間500-800件
- 4.補償金は1件あたり3000万円
から計算してみると
保険料(収入) | 100万件×3万円=300億円 |
補償金(支出) | 500件×3000万円=150億円 |
なんと150億円もの余剰金が毎年発生する計算。
これに対する厚生労働省の説明は
「原因究明も一つの大きな柱になっている。これについては、国から補助金を入れて動かしていくが、この補償制度について国から補助金を入れているわけではない」
「余剰については、お返しすることにはたぶんならない」
(保険料が補償額を上回ったときは)「「リスクは保険会社が被るスキーム」
「研究にも使うから半分の150億円あまっても返す気ないよとのこと。
さて、平成21年度の「厚生労働省予算概算要求の主要事項」によると「がん研究 103億円」「難病研究 100億円」「感染症対策研究 31億円」「生活習慣病研究(情報基盤整備・人材育成を含めて)93億円」となっています。厚生労働省はほんとに150億円を「脳性麻痺の原因究明・再発防止」につぎ込むんですかねー
というか、なぜ脳性麻痺だけ、予算ではなく保険料の余剰金から研究に使うのでしょうか・・