都立墨東病院の件です。まず、亡くなられた女性に対し、心からお悔やみを申し上げます
臨月+脳内出血疑いの妊婦さんの救急搬送の場合
1.スタッフ
産科医+脳外科医+麻酔科医+小児科医+コメディカル(看護師や臨床工学技士など)
2.設備
オペ室+NICU(新生児特定集中治療室)+ICU(集中治療室)
が最低限必要になってきます。つまり、どれか一つでも欠けてしまうと、受け入れが不可能になってしまうということです。ちなみに、受け入れ不可能な状態での受け入れについて、「やってはいけない」との司法判断があります(加古川心筋梗塞判決や奈良心タンポナーデ判決など)
さて、マスコミからは「たらい回し」だの「受け入れ拒否」だのと、バッシングされている8医療機関ですが、朝日新聞の記事や読売新聞の記事によると
医療機関名 | 受け入れ不可能な理由 |
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順天堂大学医学部付属順天堂医院 | 当直医2名は別の分娩に対応中。 産科婦人科病棟(61床)が満床 |
東京慈恵会医科大付属病院 | 当直医は前日に生まれた双生児を管理中。 産科当直医も2名いたが破水した妊婦が待機中。 NICU(9床)が満床 |
日本赤十字社医療センター | 別の妊婦が搬送中 母体胎児集中治療室(6床)が満床 |
日本大学医学部付属板橋病院 | ICU(12床)が満床 |
慶応義塾大学病院 | 症状より感染症の疑いがあると判断。しかし、感染症受け入れに必要な個室が満床 |
東京慈恵会医科大学付属青戸病院 | もともとハイリスク新生児には対応できない上に、脳外科医が不在 |
東京女子医大東医療センター | 受け入れ可能と答えたが、すでに墨東に搬送中だった |
東京大学病院 | NICUが満床 |
(もっとも女子医大は受け入れを承諾していますので、拒否ではありません)
なのに「たらい回し」「受け入れ拒否」と、マスコミは「病院が悪いんだ」的なバッシング報道をいつまで続けるのでしょうか?
とくに、フジサンケイグループは、他のメディアが「受け入れ拒否」という、適切ではないにしろ「たらい回し」よりは幾分ましな単語を使っている中で、「たらい回し」に固執しています。
また、都立墨東病院が、一度目の打診で受け入れできなかったことに対し、批判的な報道がなされていますが
◇妊婦死亡:墨東病院当直は研修医1人 2人体制維持できず 毎日新聞(2008.10.23)
最初に受け入れを断った都立墨東病院(墨田区)の当直医は「シニアレジデント」と呼ばれる研修医だったことが分かった。10月は研修医が1人で当直する日が4日あったという。墨東病院は6月、シニアレジデント当直の場合は「原則として母体搬送の受け入れを制限する」と関連団体などに文書で通知していた。当直担当だった研修医は、事前通知されている決まりに則って断ったと思われますが、そういう地域の医療連携事情について、取材もせず、メディアは叩きまくった。
今は、メディアでは「産科医不足が根本原因」「都や国は救急医療の充実を図れ」的な主張になってきていますが、初期段階での「たらい回し報道」と「墨東たたき」というセンセーショナル報道のインパクトは強く、ネット上では「またたらい回しだ」だの「医者が悪い」だのといった意見が見られます。
事実じゃない印象を植え付けたことについて、メディアはちゃんと責任・・とるわけないか