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国語研の「病院の言葉を分かりやすくする提案」中間報告


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*2008.10.26 追記
メタボリックシンドロームの項を読んでみたのですが、言い換え案の「内臓の脂肪がたまることにより、様々な病気を引き起こす状態」は、あまり適切ではありません。メタボの考え方は「肥満・脂質異常・高血圧・糖代謝異常が複数項目該当していると、危険だよ(マルチプルリスクファクター)」であり、内臓脂肪は要因の一つにすぎないです。
国語研も「単に太っていることだと誤解している人は極めて多い」と解説しておきながら、言い換え案のトップに「内臓の脂肪がたまることにより、様々な病気を引き起こす状態」と誤解されやすい内容を紹介しているのは、どうして?という感じです。
一番下にアンケートへのリンクを貼っていますので、気になる意見がある方はそちらからどうそ。(追記おわり)


過去2回に渡って紹介した、国立国語研究所の「病院の言葉を分かりやすくする提案」ですが


◇関連記事


その中間報告が発表されました。


「病院の言葉」を分かりやすくする提案(中間報告) 国立国語研究所(2008.10.21)

「病院の言葉」の分かりにくさには,いくつかの類型があります。
各類型を代表できる言葉57語を取り上げ,分かりやすく表現する具体的な工夫について,検討しました。
中間報告に対する意見を公募しています。

中間報告では、病院の言葉を「類型A」「類型B」「類型C」の3つに分類しており、重要で現場でよく使われているけど、誤解されがちな57語についての言い換え案を提示しています。

類型A:日常語で言い換える
類型Aに分類した語は,認知率が低く一般に知られていないものです。見聞きしても何のことだか分からない患者が多いので,できるだけ使わないようにしたい語です。日常語を使って分かりやすく言い換えることが望まれます。
類型B:明確に説明する
類型Bに分類した語は,認知率は高く一般に知られているものです。ところが,認知率に比較して理解率が低かったり,知識が不確かだったり,ほかの意味と混同されたりする語です。正しい意味と確かな知識が身につき,混同が起きないように,明確な説明を行うことが望まれます。
類型C:重要で新しい概念を普及させる
類型Cに分類した言葉は,認知率は低く一般に知られていないものや,認知率に比較して理解率がまだ低いものですが,新しく登場した重要な概念や事物ですので,今後は普及が期待されます。それらが一般に普及し定着するような工夫をすることが望まれます。
概念の普及には,まずそれを的確に表す簡潔で分かりやすい言葉が必要です。ところが,カタカナの長い語形やアルファベット略語は覚えにくく,分かりにくく感じる人が多いものです。概念を的確に表現できる言い換え語や簡潔な説明を,常に言い添える工夫が必要です。見出し語の後に括弧で添える言葉は,常に言い添えてほしい言い換えや説明の表現例です。
さらに,[時間をかけてじっくりと]の丁寧な説明や,[概念の普及のための言葉遣い],[患者・家族と医師の問答例]に記すような様々な工夫を行うことが,これからの医療にとって大事な概念を社会で共有するのに役立つと考えられます。
としています。言い換え案を一つ取り上げてみると(転載)

類型A:寛解(かんかい)
まずこれだけは
「症状が落ち着いて安定した状態」
少し詳しく
「症状が一時的に軽くなったり,消えたりした状態です。このまま治る可能性もあります。場合によっては再発するかもしれません。」
時間をかけてじっくりと
「病気の症状が一時的に軽くなったり,消えたりした状態です。このまま再発しないで,完全に治る可能性もあります。場合によっては再発する可能性もまだあるかもしれません。再発しないようによく様子を見ていただく必要があります。ですから,定期的に検査を受けたり,薬を飲んだりしてください。」
こんな誤解がある
病気が完全に治った状態だと誤解されやすい。一時的に症状が軽くなったり消えたりしているのであって,治ったわけではないことを,伝える必要がある。
効果的な言葉遣い
1. 一般の人はふだん見聞きしない言葉であり(認知率13.9%),耳で聞いても漢字が思い浮かばず,漢字を見ても意味が想定できない難しい言葉である。患者に対して不用意に「寛解」という言葉を使わないようにしたい。
2. ネフローゼ症候群(腎臓の働きが悪くなり血液中のタンパク質が尿として出てしまう病気)やがんなど長期間の治療に取り組んでいる患者など,病状や治療について理解が深まっている場合は,「寛解」という言葉を使ってより正確な説明を行うことが望まれる。その場合は,時間をかけて次のような工夫を行い,意味や概念をきちんと伝えることが大事である。まず,漢字を書いて,病気が一時的に寛(ゆる)くなり解(と)けたような状態になることを意味していることを伝えたい。また,完全に治ることを表す,「治癒」という言葉と対比して説明したい。
3. 寛解の状態は,このまま治る可能性もあるし,再発する可能性もある。医療者の説明で,どちらの側面がニュアンスとして強く現れるかによって患者の印象は大きく違ってくる。安心感を与えたいときは治る可能性の方に重点を置いた説明をし,油断をさせたくない場合は再発する可能性の方を強調した説明をするなど,患者の状況に応じて,説明の仕方を工夫することも大切である。
ここに注意
1. ネフローゼの場合,ぜん息の場合,がんの場合,白血病の場合など,病気に応じて説明の仕方を変える必要がある。
2. 時間をかけてゆっくり説明する場合は,次のような図示により,「治癒」「増悪」などの関連語もあわせて説明すると分かりやすい。



国立国語研究所より)

関連語
増悪(類型A)
[説明]
「病状がますます悪くなることです。一時的に良くなった状態からまた悪くなることを『再発』『再燃』と言いますが,『増悪』はもともと悪かった状態がもっと悪くなることです。」
[注意点]
「増悪」という字面を見ると,「憎悪」からの類推で「ぞうお」と読んでしまう間違いも起こりがちである。「増す増す悪くなる」と解けば,明解だが必要以上にショックを与えてしまうおそれもあり得る。「寛解」と同様,特別に患者に覚えてもらう必要がある場合以外は,日常語で言い換えたい言葉である。
という形で、言い換えの案を「まずこれだけは」「少し詳しく」「時間をかけてじっくりと」の3つ示しており(説明できる時間や重要性によって、選択する)、また誤解しやすい点や注意点についても、57語個々に詳しく説明されています。


メタボリックシンドロームやショック、せん妄といった言葉もありますので、ぜひチェックしてみて下さい。→「病院の言葉」を分かりやすくする提案(中間報告)


また、12月1日まで意見公募を行っているようですので、こちらもどうぞ。


意見公募(アンケート) 「病院の言葉」を分かりやすくする提案