保健師のまとめブログ

保健師が気になった情報をまとめています。

睡眠時無呼吸障害と糖尿病

睡眠時無呼吸の治療が糖尿病リスクを減らす[HealthDay] 糖尿病ネットワーク(2015.5.15)

糖尿病前症の患者では、睡眠時無呼吸の治療が糖尿病発症リスクの低下に役立つ可能性が、米シカゴ大学医学部助教授Esra Tasali氏らによる介入研究で明らかになった。

同氏は同大ニュースリリースで、「糖尿病および心血管疾患のリスクが高い患者では睡眠時無呼吸の検査を考慮すべきだといえる」と述べている。

睡眠時無呼吸と糖尿病か・・

睡眠時の無呼吸のために低酸素状態

血中のブドウ糖が利用されず高血糖状態が維持

インスリン抵抗性の悪化

糖尿病発症

という機序なのかな?

しかし今回の検討では、夜間に8時間、持続的気道陽圧法(CPAP)を用いた睡眠時無呼吸の治療を行うことで血糖値が改善し、糖尿病リスクが低下することが明らかになった。CPAPは、睡眠中にチューブとフェイスマスクを通じて患者の気道に安定した気流を送り込む装置だ。

おおー、CPAPで改善するのか。

睡眠時無呼吸症候群だと、

低酸素が交感神経を興奮させる

カテコラミンが増加

高血圧

脳血管障害の発症リスクアップ

もありますし、日中の眠気による生活障害もあるので、ぜひとも治療したいですね。

睡眠時無呼吸症候群診療ハンドブック

睡眠時無呼吸症候群診療ハンドブック

WHO指針「新興感染症の名称に人名や地名は含まないで」

WHOが新興感染症の名称に「人名」や「地名」「動物の名前」を含まないようにという、指針を出しました。

WHO issues best practices for naming new human infectious diseases WHO(2015.5.8)

8 MAY 2015 | GENEVA - WHO today called on scientists, national authorities and the media to follow best practices in naming new human infectious diseases to minimize unnecessary negative effects on nations, economies and people.

WHOは「いくつかの疾患名が特定の国や地域、民族へのネガティブな影響をもたらし、旅行や貿易が遮断され、食用動物の不必要な処分にもつながった」「一度名前が広がると不適切な名称であっても変更することは困難であり、はじめに科学的で社会的に許容される名称を使用することが重要」と説明しています。

指針の中で、WHOは避けるべき条件の具体例として

地理 中東呼吸器症候群、スペイン風邪、リフトバレー熱
人名 クロイツフェルト・ヤコブ病、シャーガス病
動物・食品 豚インフルエンザ、サル痘
文化、特定の層の住民や民族、産業、職業 レジオネラ(在郷軍人の意)
恐怖心を煽る用語 未知の、致命的、流行性

などをあげています。

レジオネラ(Legionella)って「在郷軍人(legionnaire)」から来ていたんですね。そういや昔、習ったような・・・

では、どういった経緯で在郷軍人が出てきたのか調べてみたところ、「在郷軍人に多い」といった理由ではなく

レジオネラ wikipedia

1976年にアメリカ合衆国ペンシルベニア州米国在郷軍人会(英語版)の大会が開かれた際、参加者と周辺住民221人が原因不明の肺炎にかかり、一般の抗生剤治療を行なったが34人が死亡した。ウイルス、リケッチア等が原因の候補に挙げられたがそれらしいものは検出されず、新種のグラム陰性桿菌が患者の肺から多数分離された。発見された細菌は在郷軍人 (legionnaire) にちなんで Legionella pneumophila と名づけられた。種形容語の pneumophila は、本菌が肺に感染することから、「肺(ギリシア語でpneumōn)を好む (-phil)」を意味する。この集団感染事例は、在郷軍人会の大会会場近くの建物の冷却塔から飛散したエアロゾルに起因していたとされている。

たしかに、とばっちりみたいな内容ですね・・・

精神保健指定医資格の不正取得について

精神保健指定医の資格不正取得ですが、精神医療を根本から崩壊させかねない問題です。

指定医不正取得 精神保健の根幹揺るがす 西日本新聞(2015.4.21)

患者の同意がなくても、都道府県知事や政令指定市長が法律に基づいて強制入院させることを「措置入院」という。そんな人権を制限する権限に関わるのが、厚生労働大臣が指定する精神保健指定医だ。社会的責任は極めて重い。

厚労省が、この指定医資格を不正取得した聖マリアンナ医大病院(川崎市)の医師20人(退職者を含む)の資格を取り消した。一度にこれほど多数の資格が取り消されるのは前代未聞である。

精神科については、他の科とは異なり、本人の同意がなくても強制的に入院させることができる仕組み(措置入院や医療保護入院、応急入院など)が精神保健福祉法で規定されています。

本人の意向を無視した「強制入院」は、憲法で保証されている基本的人権の一つである「身体の自由」を侵すことになるため、その適用については厳格に運用されなければなりません。

治療とは言え、本人の同意がないことから、やっていることは「逮捕・監禁」(拘束は逮捕、隔離は監禁ですね。)ですからね。一般人が同じことをやれば逮捕監禁罪の容疑で捕まります。というよりは、一般科でもやってもダメです。

憲法第31条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

刑法第220条 不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。

ただし、精神疾患については立法や行政、その他の関係機関において「精神障害者であり、かつ、医療及び保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがある場合は、本人の意向を無視してでも入院させて治療を受けさせる必要があるよね」というコンセンサスがあることから、特別に法律(精神保健福祉法)で認められているのが現状です。
そのため厳格に運用しなければなりません。(もちろん、「そもそも身体の自由を侵してはいけない」という意見もあります。)

その「でも入院させて治療を受けさせる必要があるよね(=身体の自由を制限する必要がある)」と判定する指定医の資格が不正に取得されており、実際に判定を行ったケースもあるとわかったため、制度の根幹を崩壊させかねないと大問題になっています。

そして、ここから広がりそうなものが「そもそも指定医制度ってどうなの?」という制度そのものについての議論。

国民へ強制力を伴う行為については、立法機関が定めた法律の範囲や司法機関が認めた範囲で行政機関の職員(立法機関の職員や司法機関の職員が執行することもあるけどね)が執行することがほとんどですが、その中でも「身体の自由を奪う行為」については、警察が被疑者を逮捕する場合でも、裁判官が発付する令状(いわゆる逮捕状)が必要など、かなり慎重に対応しています。

しかし、措置入院や医療保護入院などについては、民間*1の医療機関の医師が指定医として入院や隔離・拘束などの「身体の自由を奪う判定」ができるなど、かなり特殊な状況にあります。

このようなことから

  • 現行の指定医制度でいいのか
  • 安易な強制入院(特に医療保護入院)が行われてはいないか
  • 強制入院は公権力として公立医療機関(職員は公務員)でしか担えないようにするべきだ*2

といった「そもそも論」がでてきそうですね。

*1:「みなし公務員」の規定とかもありますが・・

*2:現在の公立精神科病院だけではオーバーフローになりますが