保健師のまとめブログ

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産経の社説は、自殺報道の在り方を理解していない人の記事


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【主張】硫化水素自殺 二次被害より一層深刻だ MSN産経ニュース(2008.5.2)


社説(産経では「主張」)の内容は

  • 硫化水素を用いた自殺は2次被害で周囲の第3者を巻き込む可能性があり危険だ
  • 硫化水素自殺が広まったのはインターネットのせいだ
  • 毎年の自殺者が3万人を超えているが、増え続けているのはインターネットの普及のせいだ
  • ネット社会に対応しながら、どうすれば有効な自殺防止につながるか一人ひとりが真剣に考える時代にきている


ですが

1番目については、自殺防止を「真剣に考えていない人」のセリフです。


「自殺の原因の改善に取り組み、自殺を防止しよう」ではなく「硫化水素自殺はまわりに迷惑がかかるから、硫化水素自殺は危険だ。しかし、こんなに恐ろしい情報がインターネットにあふれている。ネットを取り締まるべきだ」


という論理で社説は進んでおり、インターネットを批判するために「自殺」を持ち出しているだけとも、捉えられます。


2番目の「硫化水素自殺が広まったのはインターネットのせいだ」ですが

硫化水素自殺、ネットだけでなくテレビ報道も大問題(2008.5.1)


にもあるように、「硫化水素による自殺」について、「テレビで知った」と判明しているケースもありネットだけでなく、テレビも「硫化水素による自殺」が広まった原因の一つです。


ネットでは、能動的に「検索」しないと、情報にたどり着けませんがテレビでは、つけているだけで、自殺の詳細が受動的に入ってくることから


むしろ、煽りまくった報道の方が問題とも思いますが・・(日本では、WHOの自殺報道ガイドラインを無視した報道も多いですし)


3番目は「ネットの普及により自殺者が増えている」ですが


インターネット利用率と自殺死亡数をグラフ化してみました。


表1:自殺死亡数とインターネット利用率の年次推移(インターネット利用率は内閣府調査)


これで、「ネットの普及が原因」と言い切れるわけがないです。


産経新聞社論説委員様は、一体どこのソースを元に「日本では毎年、約3万人が貴い命を自ら絶っている。特にネットの普及で自殺者の数が増えているのが実情である」と言い切っているのでしょうか?


「社説」って、思い込みや脳内ソースだけで書けるものなんですね。


なお、自殺死亡数に影響があると言われている完全失業率の年次推移は下記のようになっています。


表2:自殺死亡数と完全失業率の年次推移(厚労省統計より)




実際の自殺の動機については、警察庁生活安全局の統計に詳しい資料があります。


表3:H18年度の原因・動機別自殺者数(警察庁生活安全局地域課統計)



「ネット社会に対応しながら、どうすれば有効な自殺防止につながるか、一人ひとりが真剣に考える時代にきている」のであれば、いじめ・過労・多重債務・介護疲れ・病苦等で追い込まれた、追い込まれつつある人たちを、どのように支援していくを論じるべきなのに


「インターネットで硫化水素自殺が流行ったから、インターネットの書き込みを取り締まるべきだ」では、何も考えていないのに等しいレベルです。



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と載せているんですから、「根拠無しの脳内ソースに基づいた記事」ではなく倫理綱領に沿った記事を載せてくださいな>論説委員