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メタボの診断基準が国際的に統一へ。腹囲が外れるも日本は継続


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メタボ診断:国際基準、腹囲外れる 日本は維持か−−年内にも発表 毎日新聞(2008.8.20)

メタボリックシンドローム内臓脂肪症候群)の診断基準が国際的に統一され、腹囲が診断の必須条件から外れることが分かった。年内にも暫定基準が公表され、今後、世界のメタボ診断や治療・研究は、統一基準に基づいて行われる。一方、日本が今年度から始めた特定健診・保健指導(メタボ健診)では、腹囲測定が必須でシンボル的存在。今回の統一に日本は従う予定はなく、国際的に日本の特異さを際立たせることになる。


クローズアップ2008:メタボ、国際基準統一へ おなか優先、日本だけに 毎日新聞(2008.8.20)

◇男性85センチ、女性90センチ

腹囲測定をメタボリックシンドローム内臓脂肪症候群)診断の第一条件として、今年4月から始まった特定健診・保健指導(メタボ健診)。「男性85センチ、女性90センチ」という腹囲基準の分かりやすさが注目を集めたが、肝心の腹囲が国際的な統一基準の必須条件から外されることになった。世界とは異なる基準で、公的健診を続けることは妥当なのだろうか。【大場あい、永山悦子】

国際的に使われているメタボリックシンドロームの診断基準には、IDF(国際糖尿病連合)とNCEP(米国コレステロール教育プログラム)の2つがあります。


これら2つの診断基準と日本の診断基準を比較すると

IDF NCEP 日本8学会
必須項目 腹囲
男性90cm
女性80cm以上
なし 腹囲
男性85cm
女性90cm以上
追加項目 下記から2項目以上 下記から3項目以上 下記から2項目以上
腹囲 腹囲
男性90cm
女性80cm以上
 
血圧 130/85mmHg以上 130/85mmHg以上 130/85mmHg以上
中性脂肪 150mg/dL以上 150mg/dL以上 150mg/dL以上
HLD
コレステロール
男性40mg/dL
女性50mg/dL未満
男性40mg/dL
女性50mg/dL未満
HDLc40mg/dL未満
血糖 FBS 100mg/dL以上 FBS 110mg/dL以上 FBS 100mg/dL以上
または
HbA1c 5.2%以上

となっています。


このうちIDFと日本8学会の診断基準は腹囲を必須項目としていますが、今回のIDFとNCEPによる国際的基準統一では腹囲が必須項目から外されます。


なぜ腹囲が必須項目から外されるかというと、日本では「メタボ=肥満」「メタボ=おなかがでている」と捉えられていますが、メタボの本来の意味は「代謝」(metabolism)であり、メタボリックシンドロームは「代謝症候群」


メタボリックシンドロームの考え方は

糖代謝異常や脂質代謝異常が重なると
   ↓
インスリン抵抗性や高インスリン血症を引き起こし
   ↓
血管内皮障害となって
   ↓
動脈硬化性の疾患(脳・心血管障害)につながる

というのもであり、そのため、診断基準には、代謝異常や血管内皮障害のリスクとなる項目が並んでいます。(腹囲については、内臓脂肪の蓄積がアディポ・・略・・によりインスリン抵抗性を云々で入りこんでいます)


注意したいのは「肥満でなくても、代謝異常になることがある」といこと。


それなのに「腹囲」を必須項目にしていると、「やせているけど代謝異常があり、インスリン抵抗性も見られる」「やせているけどOGTT(経口糖負荷検査)やったら糖尿病型だった」と言った方が漏れてしまいます。(しかも、少なくない)


そこで、「腹囲は必須項目でなく、追加項目にしよう」


というのが、今回の国際的基準統一にあたっての考え方の元になっているのですが
困ったのが、日本8学会基準の中心となった先生が「腹囲原理主義者」なこと。


さっそく

日本基準の基準策定で中心になった日本肥満学会理事長の松澤佑次・住友病院長は「日本の基準は、腹囲によって対象者をNCEPよりも絞り込んでいる。効率的な対策を実施するという意味では日本基準は正しく、変える必要はない」と話している。
(一番上の記事参照)

と取材に応えているようでして・・・グダグダが続きそうです。


このようなこともあり、保険者によっては、特定保健指導の対象(腹囲が必須)とならない「やせの代謝異常」に対しても、独自に保健指導を行っているところが少なくないです。