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レセプトオンライン義務化について


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保健医療福祉分野以外の専門家から見た「保健医療福祉分野」は、なかなかおもしろいです。


すべての医療機関にオンラインを強制できるか? ITpro(2009.12.7)

厚生労働省は2009年11月26日、医療の世界におけるIT利用に大きな影響を及ぼす改正省令を施行した。この改正省令は、医療機関が報酬を受け取るために提出する診療報酬明細書(レセプト)を審査支払機関にオンラインで送信する、いわゆる「レセプトオンライン」の推進を大幅に遅らせる内容になっている。

その前に言葉の説明

レセプトオンライン化とは「レセプト」を「オンライン化」するということ。
うん、これじゃ怒られそうなので、もうちょっと補足。

レセプト」とは、日本語では「診療報酬明細書」と記します。

病院に行くと、こんな領収書をもらうと思いますが


出典:倉庫業けんぽWEB


一つ一つの医療行為、使った医薬品を詳しく書いたのが「レセプト」です。


出典:医療事務の資格取得は採用後でも遅くない!


例えば、領収書では、注射などで使った薬剤は「投薬」の欄にまとめられますが、レセプトでは「どの薬剤をどれだけ使ったか」がすべて書かれています。
つまり

レセプト(診療報酬明細書)=「とても細かい領収書」

です。

これを請求書として支払基金や国保連合会といった「支払側」に提出することで、病院は自己負担を除いた医療費(保険適用部分)(売り上げ)を回収できる仕組みになっています。

レセプトオンライン化とは

今までは「紙明細で出してね」となっていましたが、「レセプトコンピュータ(レセコン)を使ってネット経由で提出してね」というのが「レセプトオンライン化」です。「レセプトオンライン義務化」は「オンライン請求しか受け付けないよ」って感じです。
支払側は、届いたレセプトをチェックして、不正な請求がないかのチェックなどを行いますが(「レセプト審査」と言います)、紙媒体が億枚単位で届くことになるため、チェックのために、膨大なお金がかかっています。


すべての医療機関にオンラインを強制できるか? ITpro(2009.12.7)

医療保険事務の効率化は待ったなしの状態だ。なにしろレセプトの審査には年間千億単位の費用がかかり、これらは国民の保険料でまかなわれているからだ。例えば、レセプトの審査にあたる審査支払機関のひとつである社会保険診療報酬支払基金(支払基金)は、人件費やシステム費などの審査費用で年間約 800億円を費やしている。


800億円もかかるのは、すべての紙のレセプトを目視で審査しているためだ。全国で約4500人の医師、歯科医師と約4400人の事務職員が審査にあたっている。審査支払機関には、年間約17億件のレセプトが提出される。このうち半数強を支払基金が審査している。

というわけで、厚労省経団連経済財政諮問会議は「レセプトをオンライン化し、事務処理を効率化しよう!」(あと、レセコン売って儲けよう)(データが電子化されたら、いろいろ統計処理できるので、情報もたくさん入ってくる)と考え、レセプトオンライン義務化を進めていました。

ここまでをまとめてみると

レセプトデータをオンライン化することで事務処理は効率化できるし、レセコン売れるし、いろいろな情報を入手できると良いことずくめな印象ですが、なぜ、医療側が強硬に反対しているかというと

立場 メリット デメリット
医療機関 紙でもオンラインでも手間は変わりません レセコン導入にかかる数百万円の経費負担
支払側 事務の効率化 オンライン化移行のための支援
厚労省 経費削減・医療費削減 オンライン化移行のための支援
経団連 レセコン売れる
健保組合の医療費削減
なし
レセコン業界 レセコン売れる なし

要は医療機関の負担"だけ"が大きすぎるという歪な形になっているからです。一番上に上げたITproの記事では

地域医療連携の恩恵を受けるのは患者である私たち国民だ。環境の整備が進み、その恩恵が広がれば、患者である国民からネットワーク接続を望む声が上がってくるだろう。そうなれば、医療機関はネットワークへの接続を拒否できなくなる。


一人としか通話できない電話を義務だから導入しろと言われたら、拒否する施設が出てくるのは当然だ。しかし通話相手が多くなれば、導入を検討する施設は増え、周辺から導入を望む声も大きくなっていく。

と表現してます。(デメリットの改善には触れてますが、やはり医療機関にとってはメリットはないようですが・・)

メディアでは、反対する医療側をバッシングするような記事を書くところもありますが、「メリットは医療機関以外、負担は医療機関」な制度では、医療機関が反対するのも仕方ないと思います。

ただ、疫学・公衆衛生分野の人間としては、レセプトオンラインデータは宝の山(すでにオンライン化している健診データと診療データが簡単に突合でける)ですので、医療機関のレセコン導入・維持費用負担を国でやって欲しいかな。