保健師のまとめブログ

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看護系大学と国立看護大学校

「将来は看護師になりたいな〜」と考えている方が、看護系の学部・学科がある大学を調べていると、「国立看護大学校」という大学?を見かけることがあるかもしれません。

「国立看護大学校?・・・大学校って何?普通の大学と違うの?」

と疑問に思う方も多いと思いますので、この記事では、看護系大学と国立看護大学校の違いについて説明したいと思います。

大学と大学校

「大学」とは学校教育法第1条に規定されている学校の1つです。

第一条  この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする。

「大学校」は、この中には含まれていないので、「国立看護大学校」は学校教育法に規定のある学校ではないことになります。

では、「大学校」である「国立看護大学校」は何に基づいて設置されているのかというと、「高度専門医療に関する研究等を行う国立研究開発法人に関する法律」(H20年法第93号)に基いて設置されています。ちゃんと法律に基づいて設置されているので、もぐりではありません。安心してくださいね。

国立看護大学校の根拠法

高度専門医療に関する研究等を行う国立研究開発法人に関する法律

(国立国際医療研究センターの業務の範囲)
第十六条  国立国際医療研究センターは、第三条第四項の目的を達成するため、次の業務を行う。
一  感染症その他の疾患に係る医療に関し、調査、研究及び技術の開発を行うこと。
二  前号に掲げる業務に密接に関連する医療を提供すること。
三  医療に係る国際協力に関し、調査及び研究を行うこと。
四  感染症その他の疾患に係る医療及び医療に係る国際協力に関し、技術者の研修を行うこと。
五  前各号に掲げる業務に係る成果の普及及び政策の提言を行うこと。
六  国立高度専門医療研究センターの職員の養成及び研修を目的として看護に関する学理及び技術の教授及び研究並びに研修を行う施設を設置し、これを運営すること。
七  前各号に掲げる業務に附帯する業務を行うこと。

第6項ある「国立高度専門医療研究センターの職員の養成及び研修を目的として看護に関する学理及び技術の教授及び研究並びに研修を行う施設」が「国立看護大学校」となります。

この条項からわかるように「国立看護大学校」は、全国に6つあるナショナルセンター(国立高度専門医療研究センター)*1のうち「国立国際医療研究センター」に属する施設としての位置づけとなっています。

ちなみに、国立看護大学校のような大学校には、以下のようなものがありますが、それぞれ独自の法律を元に設置されています。

大学名 所管 根拠法
防衛大学校 防衛省 防衛省設置法第15条
防衛医科大学校 防衛省 防衛省設置法第16条
航空保安大学校 国土交通省 国土交通省組織令第191条
水産大学校 農林水産省 国立研究開発法人水産研究・教育機構法第11条
海上保安大学校 国土交通省 国土交通省組織令第254条
気象大学校 国土交通省 国土交通省組織令第234条

特定の職業の方は「税務大学校」や「自治大学校」という名称を聞いたことがあるかもしれません。
これらの「大学校」は、学校教育法に基いていないという点では、「国立看護大学校」や「防衛大学校」と一緒ですが、学生の対象が「現役受験生」や「過卒生(大学受験浪人生)」ではなく、市町村職員といった現役の職員を対象としている点で異なります。語弊があるかもしれませんが、「素人を一から育てよう」ではなく、「担当者を専門職として鍛えよう」というのが、「税務大学校」や「自治大学校」の位置付けとなっています。

大学と国立看護大学校の比較

というわけで、「大学校というのは、それぞれの省庁が自前の法律に基づいて設置している学校なんだ」という点を理解していただいた上で、学校教育法に規定のある大学と「国立看護大学校」を比較すると、下記のようになります。

大学 国立看護大学校
根拠法 学校教育法 高度専門医療に関する研究等を行う国立研究開発法人に関する法律
所管 文部科学省 厚生労働省
目的 学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする(学校教育法第83条第1項) 国立高度専門医療研究センターの職員の養成及び研修を目的として看護に関する学理及び技術の教授及び研究並びに研修を行う施設(高度専門医療に関する研究等を行う国立研究開発法人に関する法律第16条第6項)
修業年数 4年(法87条) 4年(同大学校公式サイトより)
学位 文部科学大臣の定めるところにより、大学を卒業した者に対し学士の学位を授与(法104条) 独立行政法人大学改革支援・学位授与機構から「学士(看護学)」の学位が卒業時に取得できる。(同大学校公式サイトより)

大学ではなく「大学校」にしているのはなぜ?

「修業年数は同じ4年だし、学士が取得できるのも一緒*2なのに、なんでわざわざ大学ではなく大学校にしているの?」と疑問に思いますよね?
ぶっちゃけると答えは簡単です。

厚生労働省「この国の医療を担う高度な教育を受けた人材(看護師)を育成したいけど、大学にすると文科省の管轄になってめんどくさいので直営で作ってやれ」

です。

下記のように、学校教育法に規定のある学校(大学)の場合、文科相が定める設置基準に従う必要があります。

◇学校教育法

第三条  学校を設置しようとする者は、学校の種類に応じ、文部科学大臣の定める設備、編制その他に関する設置基準に従い、これを設置しなければならない。

このため、文科省が考える「大学教育を受けた看護師」とは異なった、厚労省が考える「この国の医療を担う"高度な教育"を受けた看護師」を養成するために設置された施設が「国立看護大学校」となります。

この両省の"考え方の違い"というのは、それぞれの教育機関における「習得できる資格」にも顕著に現れてまして、看護系大学では通常、看護師国家試験受験資格とともに保健師国家試験受験資格を得ることができますが、国立看護大学校では保健師の国家試験受験資格を得ることはできません。

国立看護大学校の特色

国立国際医療研究センターや国立がん研究センターなどの国立高度専門医療研究センターで求められる高度な臨床看護実践能力、臨床看護研究能力を身につけ、先端医療の現場や広く海外で活躍できる看護師、助産師を育成していきます。

文科省と厚労省の大卒程度の看護師に対する考えは、下記のような感じです。ちなみに下表に関しては、このブログ管理者の個人的な印象なので、文科省や厚労省にクレームを入れちゃダメですよ。

文科省 大学 大学教育を受ける看護師は、看護の実践能力だけではなく、保健師として集団を診る視点も必要。なので、保健師としての教育も行う。看護の実践能力だけでいいなら、専門学校と何が違うの?
厚労省 大学校 この国の医療を担う国立高度専門医療研究センターでは高度な能力を身に着けた看護師や助産師が必要。必要なのは、看護師や助産師であり、地域を集団で診る保健師は必須にしない。

というわけで・・

というわけで、看護系学部を探している時にでてくる「看護系学部(例:○○大学医学部看護学科)」と「国立看護大学校」ですが、両者とも①高卒者を対象に、②修業期間が4年で、③卒業時には看護師国家試験受験資格と学位(学士)が授与/取得される

という内容は同じであっても、それぞれ異なった方針で設置されている教育研修機関であることを理解した上で、受験する大学・大学校等を選択するようお願いいたします。

ちなみに「国立看護大学校」の卒業後は?・・・

国立看護大学校の公式サイト(卒業後の進路)によると、1学年100名のうち、国立高度専門医療研究センターに就職にするのが、ほとんどのようですね。

▽H27年
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ただ、例えば「国立国際医療研究センター病院(本院)」の新卒採用者は100名程度ですが、国立看護大学校の卒業生は22名(グラフでは本院と分院を合計して28名としていますが、実際は本院22名の分院6名となっています。)。新卒採用者に占める割合は2割程度なので、国立看護大学校以外からもナショナルセンターに就職することは可能です。

*1:国立がん研究センター・国立循環器病研究センター・国立国際医療研究センター・国立成育医療研究センター・国立精神神経医療研究センター・国立長寿医療研究センター

*2:国立看護大学校の場合は間に変な機構を挟んでますが

自立支援医療(精神通院医療)の注意点

日本では、病院にかかった場合、かかった医療費に対する自己負担は"基本的"には3割負担となっています。なので、医療費が総額で10,000円かかったとしても、窓口での支払いは3割の3,000円となります。(保険診療の場合。にんにく注射等の自由診療は別世界のお話。)

ですが、国や地方自治体・保険者においては、特定の対象者に対してその負担軽減を図るために、様々な負担軽減策を行っています。

後期高齢者医療制度 自己負担を1割に軽減
こども医療費助成制度(乳幼児医療費助成制度) 自己負担は3割のままだけど3割の部分を自治体が独自に負担(負担の割合や対象年齢は自治体によってバラバラ)
限度額適用認定証 所得に応じて月あたりの自己負担の上限額が設定されており、それ以上は保険者が負担。

※負担軽減を図るための取り組みのため、一定以上の所得がある方に対しては対象外となることも。
※上記の説明はざっくりとした説明でして、他法優先の制度だったりと、本来は場合分けがややこしいです。

自立支援医療(精神通院医療)について

ざっくり説明すると「特定の精神疾患のために通院医療が必要な方に対し、医療費負担の軽減を図る」制度です。
自己負担は3割→1割に軽減された上で、所得に応じて自己負担の上限額が設定されているハイブリッドな制度となります。
ちなみに「通院医療」が対象なので、入院医療は対象外です。

負担軽減の仕組みはと言うと、精神通院にかかった月の医療費が5万円すると、本来は3割負担なので15,000円となりますが1割負担なので5,000円。さらに、本人が市町村民税非課税世帯の一員で本人の所得が年額80万円以下(障害基礎年金2級の年金年額程度)の場合、所得に応じた上限額(応能負担額)が2,500円のため、最終的な自己負担額は本来の15,000円→2,500円となります。
※国の基本設計は以上のような形ですが、自治体によっては自己負担の部分も独自に助成している所もあります。

自立支援医療(精神通院医療)の注意点

この自立支援医療(精神通院医療)の注意点は、「事前に医療機関を登録しておく必要がある」という点です。

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後期高齢者医療制度で自己負担が1割となっている方は、A病院を受診しようが、B病院を受診しようが、A病院に通いつつC病院も同時に通院しても、それぞれの医療機関での自己負担割合は「1割」ですが、自立支援医療(精神通院医療)では、申請する時点で、通院する医療機関を1つ登録する必要があります。この時に登録した医療機関以外を受診しても、自立支援医療(精神通院医療)は適用されません。

「引っ越し先からA病院に通うのは遠くて難しいので、引越し先から近いC病院に変えたい」

といった場合は、市町村役場で医療機関を変更する手続きが必要です。
手続きをせずに別の病院に通った場合は、自立支援医療(精神通院医療)が適用されずに、通常の負担(国保や社保であれば3割負担)となります。

というように、自立支援医療(精神通院医療)においては「医療機関の登録」が重要となってきますが、登録が必要なのは病院だけではありません。薬局・精神科デイケア・訪問看護(精神疾患のため)、それぞれ登録する必要があります。

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この場合、4箇所を登録しなければいけません。そして、4箇所のうち1箇所を変更するだけでも、市町村役場にて変更の手続きが必要となりますので、ご注意のほどよろしく願いします。

日本国政府最後の砦「立川広域防災基地」

シン・ゴジラ面白かったですね。
個人的には、各々の大臣が其々それっぽい役者さんだったのがグッと来ました。
特に金井防災担当大臣(シン・ゴジラ)と甘利経済再生担当大臣(現実)がそっくりだったので、映画館では笑いを堪えてニヤニヤしていた気がします。

▽参考資料

金井防災担当大臣 甘利経済再生担当大臣
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あれ?思ったより似ていない?
まあ、それは置いといて、劇中に出てきた「立川」ですが、その位置づけについて調べてみました。

まず、何かしらの大きな災害があった際に内閣総理大臣が内閣府に設置する機関が「非常災害対策本部」

災害対策基本法

(非常災害対策本部の設置)
第二十四条  非常災害が発生した場合において、当該災害の規模その他の状況により当該災害に係る災害応急対策を推進するため特別の必要があると認めるときは、内閣総理大臣は、内閣府設置法第四十条第二項 の規定にかかわらず、臨時に内閣府に非常災害対策本部を設置することができる。

「非常災害が発生した場合で、特別の必要があると認めるとき」に、内閣総理大臣の判断で臨時に内閣府に設置することができるのが「非常災害対策本部」です。

直近でいうと、御嶽山の噴火や、広島県で土砂災害のあったH26年8月豪雨の際に設置されています。

ただし、立川が関わってくるのは、この「非常災害対策本部」ではなく、同法28条の2に規定される「緊急災害対策本部」です。

災害対策基本法

(緊急災害対策本部の設置)
第二十八条の二  著しく異常かつ激甚な非常災害が発生した場合において、当該災害に係る災害応急対策を推進するため特別の必要があると認めるときは、内閣総理大臣は、内閣府設置法第四十条第二項 の規定にかかわらず、閣議にかけて、臨時に内閣府に緊急災害対策本部を設置することができる。

この緊急災害対策本部が設置されたのは、H23年の東日本大震災が唯一の事例となっています。

まとめると下記のようになります。

非常災害対策本部 当該災害の規模その他の状況により当該災害に係る災害応急対策を推進するため特別の必要があると認めるとき
緊急災害対策本部 著しく異常かつ激甚な非常災害が発生した場合において、当該災害に係る災害応急対策を推進するため特別の必要があると認めるとき

この緊急災害対策本部については、H15年11月12日の閣議了解において、緊急災害対策本部の設置順位的なものが定められたのですが

順位 名称 場所
1位 官邸危機管理センター 千代田区永田町
2位 中央合同庁舎第8号館 千代田区永田町
3位 防衛省中央指揮所 新宿区市谷本村町

この3つが使用できない場合に使われるのが、立川の「災害対策本部予備施設」です。

内閣府所管防災施設

国は、災害の規模その他の状況により非常災害として災害対策を推進するため特別の必要があると認めるときは、災害対策基本法に基づく非常災害対策本部を設置し総合的な災害応急対策の推進にあたることとしています。さらに、著しく異常かつ激甚な災害が発生した場合には、内閣総理大臣を本部長とし、全国務大臣を本部員とする緊急災害対策本部が設置されます。
首都直下地震等が発生した場合の設置場所は、閣議了解(平成15年11月21日)により、被災状況等を勘案し、①首相官邸、②内閣府、③防衛省の順番とされています。しかし、これらの施設が甚大な被害を受け、政府の災害対策本部の運営を行うことができないような事態が生じた場合には、立川広域防災基地内の災害対策本部予備施設に政府の災害対策本部が設置され、国の災害応急対策活動の拠点となります。

位置関係は下図のようになります。

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つまり、緊急災害対策本部設置優先順位の第1位・2位である永田町の首相官邸や中央合同庁舎8号館だけにとどまらず、第3位の市ヶ谷の防衛省が甚大な被害を受けて使用できなくなった場合でも、同時に被災することがないだろうと判断され第4位に指定された場所が「立川」ということになります。

立川に緊急災害対策本部が設置されている状況≒都心壊滅なため、立川には都心が機能不全に陥っても業務を継続できるよう
警察や消防、海保の他、内閣府と国交省の合同庁舎やナショナルセンターである国立災害医療センターなどが立ち並んでいます。

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△出典:http://www.bousai.go.jp/oukyu/kunren/yobishisetu/

ちなみに、立川の予備施設までダメとなった場合、どうなるかというと、どうにもなりません。予備施設の予備までは想定していないので、立川がまさに「政府最後の砦」ですね。