LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の基準値については、日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン<2007年版>」において
LDLコレステロール≧140mg/dl(総コレステロール値約220mg/dl)が「高LDLコレステロール血症」の基準として採用されました。
が、当初から「低すぎる」という意見もあったりします。
◇コレステロール新基準 読売新聞(2007.6.8)
従来の総コレステロールの基準値(220以上)には、「日本より数倍も心筋梗塞が多い米国の基準値(240以上)より、なぜ厳しい数値なのか」など、疑問視する専門家も少なくなかった。新基準から総コレステロール値を外すことで、こうした批判をかわす効用もある。
もっとも、今回の基準値であるLDL140以上は、総コレステロールでは220程度以上に相当するので、新基準でも、数値の妥当性への疑問は引きずったままだ。
寺本さんは「日本人は心筋梗塞が少ない国民のままであってほしいという願いを込めた基準値」と話すが、科学的根拠は乏しい。
別の課題もある。循環器が専門の佐賀県・ニコークリニック院長、田中裕幸さんは「女性の心筋梗塞は男性の2分の1から3分の1と少ないのに、基準値が男女とも同じなのは不合理」と指摘する。
記事によると、米国では、女性の場合、血圧や血糖値など他の項目に問題がなければ、「LDLコレステロール≧190mg/dl」のときに治療の対象となるようですが、日本では、男女ともに目標値が140mg/dl未満となっているため、「米国では治療不要とされる女性に過剰な治療が行われる恐れがある」との指摘もあるとのこと。
こんな経緯があるため、2008年9月5日に開催された日本脂質栄養学会の「日本脂質栄養学会第17回大会」では、論戦が繰り広げられたようです。
◇コレステロール基準値巡り論争 読売新聞(2008.9.12)
コレステロールに関する日本動脈硬化学会の診断基準をまとめた寺本民生(たみお)・帝京大教授は、コレステロール値が高いほど心筋梗塞(こうそく)などの心臓病が増えると指摘。海外の多くの研究で、コレステロールを下げる治療により、死亡率が低下することが明らかになった、と強調した。
LDLコレステロール値140以上の場合を脂質異常症とした診断基準について、大櫛(おおぐし)陽一・東海大教授(医学情報学)は、全国70万人の健診データなどをもとに「心臓病が増えるのは、数値が190以上の場合であり、基準には根拠がない」と批判した。
これに対し、寺本教授は「LDLがそれほど高くなくても、糖尿病などを併せ持つ場合は心臓病の危険が高まる。そうした人を見つけ出すための基準値」と説明した。大櫛教授は「糖尿病を併発する場合でも、LDL値140以上で心臓病の危険が高まるというデータはない」と反論した。
なお、「動脈硬化性疾患予防ガイドライン<2007年版>」でも、LDLコレステロール140mg/dl以上ならすぐに薬物療法開始というわけではなく、リスク数に応じて管理目標を設定した上で、まずは「生活習慣の改善から」となっています。
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