保健師のまとめブログ

保健師が気になった情報をまとめています。

高齢運転者に関する交通安全対策

改正道路交通法がH29.3.12に施行されます。中型免許に関する改正もありますが、一番大きいのは、高齢運転者に関するものです。

高齢運転者に関する交通安全対策についての規定が整備されます 警視庁(2017.1.27)

高齢運転者の交通安全対策の推進のため、平成29年3月12日から、加齢による認知機能の低下に着目した臨時認知機能検査制度や臨時高齢者講習制度の新設、その他制度の見直し等が行われます。


大きなポイントは2つありまして

1つめ:免許更新時の対応がより細やかに

これまでは、75歳以上については全員を対象に認知機能に関する検査を行っていましたが、判定結果に関係なく全員免許更新が可能であり、「認知症の疑いがある方」と判定された方が特定の違反を起こしていた場合に医師の診断書を求めていましたが、
改正後は、認知症の疑いがある方全員に対し、臨時の適性検査or医師の診断書の提出を求めることになっています。

↓図を作ったのはいいけど、小さいのでクリックで拡大してください。

◇H29.3.12改正前

f:id:hokenshi:20170218213049p:plain

◇H29.3.12改正後

f:id:hokenshi:20170218213056p:plain

2つめ:特定の違反を起こした場合に、臨時の検査・講習を実施

75歳以上の高齢運転者が「認知機能が低下した際に起こしやすい違反行為」を起こした際に、臨時の検査や講習を行うようになります。
頑張って図を作ろうと思ったんですが、警視庁のサイトが分かりやすかったので、転載します。

↓図は警視庁のサイトより転載

f:id:hokenshi:20170218214325p:plain
転載元→http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/menkyo/koshu/koureisha_anzen.html

まとめると

今回の改定のポイントについてまとめると

これまで [免許更新時]
75歳以上の高齢運転者が免許更新時の検査の結果、認知症の疑いがあるとされた方が、「特定の交通違反をしていた」際に医師の診断書を求めていた。
改正後 [免許更新時]
75歳以上の高齢運転者が免許更新時の検査の結果、認知症の疑いがあるとされた方は、全員「臨時適性検査の受検」か「医師の診断書の提出」が必要。
[随時]
②75歳以上の高齢運転者が「認知機能が低下した際に起こしやすい交通違反」を起こした際は、臨時認知機能検査を実施。

個人的に気になること

認知機能に合わせて細やかに対応することは良いと思うのですが、「医師が認知症と診断したら停止か取消」というのは、どうなんだろ。
介護保険の「要介護度」や、障害者総合支援法の「障害支援区分」も、調査員による調査書の他に医師の意見書を求めていますが、最終的な決定を行うのは「認定審査会」。医師の専門的判断はあくまでも「医学的な視点による意見」としても位置づけであり、その他の要件も勘案し要介護度や支援区分を決定しています。

しかし、今回の道交法の改正については、警視庁等のサイトを確認する限りでは、「認知症と診断されたら停止か取消」となっており、行政処分を医師に丸投げしているようで、個人的には引っかかります。(認知機能の低下=誰一人例外なく車の運転能力は低下・・・なら理解できます)

道路交通法改正Q&A―高齢運転者対策の推進、準中型自動車免許の新設等―

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臨床経験のない保健師向け講座第1回「現場」

講座の趣旨

突如始まった「臨床経験のない保健師向け講座」ですが、
この講座は、「卒業してそのまま自治体で保健師として採用されました」的な"臨床経験がない保健師"を対象に、
"臨床経験がない保健師"にありがちな注意点や気づきにくい注意点、その他いろいろな注意点について
不定期にいろいろアレコレするコーナーです。

第1回テーマ「現場」

保健師として働いている方の大半は「行政保健師」。つまり都道府県や市町村といった行政機関で働いている方が大半となっていますが、
行政機関で働いている皆さん、下記のように思っていませんか?

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本庁にいる保健師 生活保護や高齢者福祉課、障がい者福祉課といった直接住民と接する私達が"現場"。
出先にいある保健師 私達が対住民の最前線。本庁にいる奴らとは違って、私達が(以下同文

と考えがちです。(まあ、上の図の時点で本庁組と出先組でアレな感じになってますが・・)

自分も、そう考えていました。
でも、住民や関係機関の考え方は違います。

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結局のところ、当事者自身(もしくはその家族)が現場であり、行政はあくあでも「行政」です。

もちろん、保健師や生活保護のワーカーは行政での最前線ではありますが、医療機関・施設・地域・家族・当事者の認識はそれとは異なります。

「現場だ」という気持ちは大切ですが、一方で、そう思われていない場合も少なくないということを、心の片隅に留めておきましょう。

役人からヘルパーへ 医療・介護担当の行政マンが介護現場で働いて見えたもの

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放課後等デイサービスと就労継続支援A型にメスが入るようです。

障害児預かり、運営厳格化 厚労省 佐賀新聞(2017.1.5)

厚生労働省は4日、障害のある子どもを放課後や休日に預かる「放課後等デイサービス」について、職員に障害児の支援経験を求めるなど、事業運営の条件を4月から厳格化する方針を固めた。利益優先の事業者による報酬の不正受給や、テレビを見せるだけでほとんどケアをしないといった事例があるため、不正防止や質確保を図る。

また、厚労省は主に成人の障害者が最低賃金以上を受け取って職業訓練する「就労継続支援A型事業所」も、不適切な運営がみられるため、是正策を講じる。いずれも6日に開く審議会で見直し案を示す。

この2つについては、サービス給付の実施主体である市町村(自治体)からすれば、国が示した設置基準や運営基準が緩く、サービス内容が"玉石混交すぎる"と言われていただけに、今回の厳格化は当然であり、遅すぎた対応といえます。

放課後等デイサービスに関しては、一般の児童とは異なる「障がい」という定型ではない支援が必要な児童に対して支援を行う場であるのに、「指導員または保育士」(※指導員は資格要件が特に設けられていない)と、なぜか定型発達している子をメインで受け入れている保育園よりも緩い基準となっていたり、

就労継続支援A型についても、「給付費(自治体が事業所に支払う訓練手当)を利用者への給与にまわしても儲かります。障がいも"軽い方"を選べば特に専門的な知識がなくてもできます。利用者の勤務時間は算定要件最低限の4時間/日にすれば儲かります」みたいなことを謳っているコンサルトが居たりと

「障害者ビジネス」と言われかねない広がり方をしていた部分もありましたので、今回の「運営厳格化」は、当然とも言えます。

ただ、制度が始まって4年以上たち、こういった制度の利用を前提とした上で、生活されている家庭が多いのも事実でして・・
市町村としては「国が厳格化したので、これからは駄目です。」と一刀両断するわけにもいかず、国の尻拭いをすることになりそうですね。


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