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後期高齢者にふさわしい医療は「90日以上は入院するな」?


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後期高齢者医療制度について、厚労省は「後期高齢者の特性にふさわしい医療を提供します。後期高齢者医療制度がはじまっても、受けられる医療の内容はかわりません」と説明しており、福田総理も4月1日の閣僚懇談会で「高齢者にとって良い制度だ、理解してもらうためにも、もっとPRしなくちゃ」という発言していました。


が、日経メディカルに気になる記事がありました。
会員登録しないと閲覧できないので、気になった部分を引用しています。


多田富雄氏(東大名誉教授)に聞く 「リハビリ制限、後期高齢者医療制度は国のうば捨て施策」 日経メディカル(2008.4.2)

しかし国民はまた捨てられようとしています。気付かぬうちに、弱いものから捨てられていくのです。気付いたときはもう遅い。リハビリの日数制限、療養病床の削減に続き、今度の後期高齢者医療制度も、老人を現行の健康保険から切り離し、医療を制限し、負担を強いる典型的な「うば捨て政策」です。


厚労省後期高齢者の医療に差別はないと、これまでずっと宣伝してきましたが、驚くべきことにそれは完全なる虚偽でした。既に外来の後期高齢者に対する差別政策は明らかです。ところが、後期高齢者が一般病院に入院すると、91日目から後期高齢者特定入院基本料の算定が始まり、報酬は3分の2以下に減額され、投薬、検査には1円も支払われません。また、障害者は75歳になる前、65歳から後期高齢者に組み入れるという差別を、堂々と実行しようとしています。これが障害者の人権を無視した、憲法違反の制度であることは誰の目にも明らかです。そこまで「棄民」は広がっているのです。


診療報酬には全然詳しくないので、見当違いかもしれませんが


太字にした「後期高齢者が一般病院に入院すると、91日目から後期高齢者特定入院基本料の算定が始まり、報酬は3分の2以下に減額され、投薬、検査には1円も支払われません」


という部分は「75歳以上(と65歳以上の障害者)は3ヶ月は一般病棟には入院させんな」(by厚労省)というように読み取れるのですが・・・


とりあえず、「平成20年度診療報酬改定に係る通知等について」から、入院基本料について記載されている部分(診療報酬の算定方法 第1章基本診療料[PDF:249KB])を見ると


一般病棟入院基本料(1日につき)

 7対1入院基本料   1,555点 
 10対1入院基本料   1,300点 
 13対1入院基本料   1,092点 
 15対1入院基本料    954点 


とあります。(○対○については、そのうち別記事で取り扱いますが、上にあるほど看護師一人が受け持つ患者さんが少ない=より看護師が必要な重症患者が多い病棟と考えてください)


ただし、この一般病棟入院基本料には「ただし書き」というものがありまして
(というよりは、ただし書きがある法令が普通ですが)


一般病棟入院基本料については、下記のような、ただし書きがあります。(一部抜粋)

注4.注1から注3までの規定にかかわらず、特定患者(高齢者医療確保法の規定による療養の給付を受ける者(以下「後期高齢者」という。)である患者であって、当該病棟に90日を超えて入院する患者(別に厚生労働大臣が定める状態等にあるものを除く。)をいう。以下この表において同じ。)に該当するもの(第3節の特定入院料を算定する患者を除く。)については、後期高齢者特定入院基本料として928点を算定する。ただし、特別入院基本料を算定する患者については790点を算定する。


注5.注4に規定する後期高齢者特定入院基本料を算定する患者に対して行った第3部検査、第5部投薬、第6部注射及び第13部病理診断並びに第4部画像診断及び第9部処置のうち別に厚生労働大臣が定める画像診断及び処置の費用(フィルムの費用を含み、別に厚生労働大臣が定める薬剤及び注射薬(以下この表において「除外薬剤・注射薬」という。)の費用を除く。)は、所定点数に含まれるものとする。


「一般病棟入院基本料」と「ただし書き」をまとめると


後期高齢者は90日までは1555点〜954点で計算していいですが、91日超えると、928点にまで点数を減らます、さらに薬も注射も検査をやっても金は出しません」(by厚労省)という意味です。


これって厚労省が遠回しに「赤字になりたくなかったら、75歳以上の後期高齢者と65歳以上の障害者は、90日以内に一般病棟から出せや」と病院に迫っているようなものですよね?


しかし、受け入れ先の療養病床は国の方針で激減中。介護施設が、療養病床でも受け入れ困難なときがある「脳卒中後でリハビリ中です」「癌の疼痛緩和のためにMSコンチン使用してます」といったケースを受け入れるのはほとんど無理だろうし(違っていたらすみません)


ということで、お国より与えられた選択肢は


1.病院が赤字負担
2.療養病床・介護施設が無理をする
3.在宅療養と言う名の家族負担


の3パターン。とてもじゃないが「受けられる医療の内容はかわりません」とは思えない。


90日というと・・・7月上旬には、3つの選択肢しかない患者さんが出てくるわけでして
保険料(税)や名称で騒いでいますが、これが一番の問題かもしれない雷


後期高齢者医療の在り方に関する基本的考え方



を見てみると、国は「安らかな終末期を在宅で迎えるべき」という考えのもと、医療機関にいられないような点数をつけているようですが、「死生観に対する国民の合意」と「在宅療養体制の充実」がないまま、「医療機関にいられなくなるような点数設定」だけ先にやると混乱が発生し、国民と現場に崩壊しかねない負担がいくだけです。


「就労支援・自立支援を進めるから、地域で生活しサービスは応益負担してくれ」という考えのもと進められた障害者自立支援法で、「地域の受け入れ体制」と「就労支援体制」が不十分なうちに、「応益負担」と「地域移行」を導入したために、国民と現場が混乱している現状を、丁寧に後追いをしているだけですね。


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