◇「地域守る責任放棄」 夕張医療センター、道・市を批判 朝日新聞(2008.5.1)
北海道の旧夕張市立病院を公設民営診療所として引き継いだ夕張医療センターの経営危機問題で、同市の前病院経営アドバイザー、伊関友伸・城西大准教授が30日、記者会見し「センターは黒字経営の医療をしているのに、老朽施設の維持費で資金不足に陥っている。財政破綻(はたん)の市に代わって地域医療を守るべき道の責任は大きい」と述べ、トップの高橋はるみ知事の責任に言及しながら厳しく批判した。
同席した同センター長の村上智彦医師も、市側がセンターの「経営努力の必要性」を指摘したことに対して「訂正しないなら、我々はここを立ち去るつもりだ」と怒りをあらわにした。
2007年3月に財政再建団体に認定された北海道の夕張市ですが、その夕張市が運営していた夕張市立総合病院は
- 病院事業会計を(市の会計の)不適切な会計操作の場として利用
- 診療報酬請求漏れが多い上に、患者の未払いは放置(職員アンケートより)
- 一時借入金が平成4年に10億円、赤字は40億円を超えたのに抜本的改革をしない
ということから、財務状況は悪化していた上に
- 医師の給与は300万円安い(卒後15年目、道内平均比)
- 准看護師は110万円高い(全国平均比)
- コメディカルや現業職、事務職は70-200万円高い(全国平均比)
- 古株が幅をきかす(職員アンケートより)
といったことから、平成15年頃から医師・看護師の退職が相次ぎ、財政再建団体になった頃には、医師数の絶対的不足により「病院存続すら危ぶまれる」という状態でした。
そこに助け船を出したのが、北海道瀬棚町(2005年9月1日に北檜山町・大成町と合併し、せたな町へ)の瀬棚町国民健康保険医科診療所で働いていた村上智彦医師です。
村上医師が瀬棚町で取り組んでいたのは「地域医療」と「予防医療」
保健師が各家庭を回り保健指導を繰り返すことで、むだな投薬や検査を減らす「予防・地域包括ケア」を実践し、就任前の99年には約106万円だった1人当たりの老人医療費を退任時には77万3678円にまで改善させた。
と、「予防医療と言えば瀬棚町」「予防医療と言えば村上医師」というぐらいの有名な先生なんですが・・、合併後の「せたな町」の新町長が「道路や産業が優先」と主張し、予防医療に制限を加えたため退職。これについては、朝日新聞の記事が詳しいです→「地域医療先導 医師去る せたな町」
このような地域医療・予防医療の実践家として結果を出している村上医師が「夕張市民のためになるなら」と旧夕張市立病院を公設民営診療所として引き継いだ夕張医療センターのセンター長に就任しました。
誰がみてもわかるぐらい夕張にとっては貴重な人材なのですが、夕張市は、村上医師一人体制のときから「救急もやって」と医師を使い捨てにするような発言をしていたりと、自分たちの置かれている状況を理解できていなかったわけでございます。*1
そして、今度は医療センターの「センターは黒字経営。だけど市から譲り受けた施設が年季が入っているため光熱費が無駄に3000万円かかっているので資金不足」という意見に対し
夕張市「人件費が高いんだよ、経営努力が必要だろ」
と指摘したそうです(´・ω・`)
「市民のために」とかけつけた医師に対し、医療・介護サービスを丸投げした上で、要求だけは一人前の発言をする夕張市ですが、「今度、撤退されたら再びくる医師なんていない」ということを理解しているのでしょうか
◇参考リンク
○夕張市公式ホームページ
○夕張医療センター
○夕張の診療所が危機 札幌テレビ放送