◇【断 久坂部羊】介護業界の隠れた危機 MSN産経ニュース(2008.6.5)
ある会合で、若手のヘルパーやケアマネジャーに話を聞いたら、勤務環境の悪さにあきれさせられた。給与も低いが、その上、ベテラン職員がサービス残業や休日出勤を進んでやるので、手当の請求ができないというのだ。
なぜベテランがそうするのかと聞くと、「奉仕精神に燃えているから」と、半ば揶揄(やゆ)するような答えが返ってきた。
介護は心身ともに重労働だが、ある種の精神性を伴っている。高齢者の役に立っているという喜びや、福祉を担う尊い仕事という実感だ。その気持ちは大切だが、行き過ぎると、お金のためにしているんじゃないという、いびつな高潔さにつながる。
現場では、残業代や休日手当を請求しない介護職員がけっこういるという。それくらい介護の現場には善意にあふれた人が多いのだ。サービス担当者会議などに出席すると、介護の問題について熱い議論が交わされる。熱心な人にかぎって、待遇面での不満を言わない。だから介護職が安く使われる。
理想に燃えるのはいいが、正当な手当を請求できないようでは、若手が離れてしまう。
介護事業所も、経営が楽なところは少ないだろう。しかし、だからと言って、権利放棄で働く職員に寄りかかり、支払うべき手当を出さないのは言語道断だ。
超高齢社会を迎えつつある今、介護職の行き過ぎた奉仕精神と、それにつけ込む介護事業所は、将来に深刻な危機を招くおそれがある。(医師・作家)
- 「熱心な人にかぎって、待遇面での不満を言わない。だから介護職が安く使われる」
- 「理想に燃えるのはいいが、正当な手当を請求できないようでは、若手が離れてしまう」
- 「権利放棄で働く職員に寄りかかり、支払うべき手当を出さないのは言語道断だ」
- 「介護職の行き過ぎた奉仕精神と、それにつけ込む介護事業所は、将来に深刻な危機を招くおそれがある」
いや正論です。保健医療福祉職に共通している状況ですよね。「スタッフの行き過ぎた奉仕精神と、それにつけ込む雇用主(や行政)」というのが。
が、久坂部氏って3ヶ月前のコラムで真逆の事を言っていました。
◇医師兼作家の久坂部羊「医師に労基法はそぐわない」(2008.3.28)
- 「研修医の一部が、医師のありようを学ぶ前に休暇の権利を覚えたりするようになった」
- 「万一、医師が労基法の適用を求めだしたら、現場はたいへんな混乱になる」
と「現場の状況はひどいものだが、医師は権利なんて覚えずに、労基法の適用も求めるな」
みたいなこと言っていましたが・・・心境の変化があったのか、それとも「医師は叩いた方が、掲載されている産経にも、読者の受けもいいから」という理由からなのか・・どっちにしろ矛盾しまくっていますね。
ちなみに、一番上のコラムをちょっといじったら、しっくり来た。
- 「熱心な人にかぎって、待遇面での不満を言わない。だから勤務医が安く使われる」
- 「理想に燃えるのはいいが、正当な手当を請求できないようでは、若手医師が離れてしまう」
- 「権利放棄で働く勤務医に寄りかかり、支払うべき手当を出さないのは言語道断だ」
- 「勤務医の行き過ぎた奉仕精神と、それにつけ込む公立病院は、将来に深刻な危機を招くおそれがある」