前回の記事「特定健診・特定保健指導情報(1)保険制度の概要」のなかで、「平成20年度からの新しい医療保険の枠組み」について説明しました。
この新しい枠組みの図の赤い点線で囲まれた部分。75歳以上を対象とした「後期高齢者医療制度」について、さらに詳しく見てみます。現在、この部分は「老人医療」という制度で運営されているのですが前回の記事にもあったように、ここがとてつもない大赤字。
そこで、国は
- まず、75歳以上を別の保険「後期高齢者医療制度」として独立させる
- しかし、75歳以上だけの保険料では、運営するのは無理*1
- ということで、国保や被用者保険から後期高齢者支援金という形で負担してもらう
- が、後期高齢者の医療費を適正化しないと、支援金負担が増大し共倒れになってしまう
- となると、「治療」ではなく、「予防」が重要
- 日本人の3大死因のうち、脳血管障害と心疾患は、メタボリックシンドロームによるものが大きい。そして、メタボリックシンドロームは予防できる
- メタボ=生活習慣、若い世代の対策が重要
と言った事柄から「国保および被用者保険の保険者にメタボ対策を義務づけ改善させる」と、考えています。ちなみに、後期高齢者には「生活機能評価」を取り入れ、介護予防を徹底させると
つまり
国保、被用者保険の加入者(若い世代) | メタボ対策 |
後期高齢者(75歳以上) | 介護予防 |
の2本立てで、医療費と介護費の削減を図るのが国の考え。ですが・・・メタボ対策については
- 「メタボ対策してください」だけでは、積極的に取り込まない保険者がでてくるかもしれない
- なら、ペナルティ(メタボ対策がよければ支援金負担を減。悪ければ支援金負担を増)を導入しよう。
と言うわけで「ペナルティ」という考えが生まれました。(多分)
なお2007年4月20日の記事「後期高齢者医療制度とは? 後期高齢者医療支援金とは?」では「後期高齢者医療支援金」としていましたが、「後期高齢者支援金」が正しい用語でした
では、その後期高齢者医療制度の仕組みがどうなっているかというと(やっとで本題)
1.医療費負担の内訳
75歳以上の方が病院にかかると、窓口での自己負担は所得に応じて1割-3割となります。で、残りの7割-9割を負担するのが「都道府県広域連合」。老人医療制度では、市町村がここを担当していましたが、市町村の体力の差が大きいので都道府県広域連合という新しい枠組みを作り一本化してます。
介護保険の場合
- 市町村で単独運営
- 市町村が集まって介護保険広域連合を組む
2つのパターンがありますが、同一県内で保険料の高い市町村と安い市町村がでてきてしまいました。そこで、後期高齢者医療制度では
- 都道府県単位の広域連合
のみにし、同一県内での市町村格差を減らそうとしています。
2.都道府県広域連合での医療費負担の内訳
窓口負担の残りの7割-9割を負担するのが、都道府県広域連合。
その、負担の内訳は
75歳以上の後期高齢者の保険料 | 1割 |
公費負担 | 約5割 |
後期高齢者支援金 | 約4割 |
となっています。
ここで注目したいのが、公費負担と支援金についている「約」という文字。この部分が、この記事の上に書いている
>「メタボ対策してください」だけでは、積極的に取り込まない保険者がでてくるかもしれない
>なら、ペナルティ(メタボ対策がよければ支援金負担を減。悪ければ支援金負担を増)を導入しよう。
>と言うわけで「ペナルティ」という考えが生まれました。(多分)
のペナルティとなっています。
メタボ対策の取り組みによってここが3割-5割に変化します。
取り組みが不十分 | 支援金負担が1割増となり、国保や被用者保険の負担(=保険料を払っている若い世代の負担)が↑ |
取り組みが十分 | 支援金負担は1割減となり、国保や被用者保険の負担が↓ |
となってきます。
長くなったので、3.おおざっぱな試算は次の記事へ→「特定健診・特定保健指導情報(3)ペナルティの試算」
- 特定健診・特定保健指導情報(1)保険制度の概要(2007.11.12)
- 特定健診・特定保健指導情報(2)後期高齢者医療制度(2007.11.16)
- 特定健診・特定保健指導情報(3)ペナルティの試算(2007.11.16)
*1:高齢者ばかり=保険料よりも、医療費の方が遙かに大きいので